eぶらあぼ 2019.12月号
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75紀きひら平凱かいる成(ピアノ)ミラクルな18歳が放つファンタジーとカプースチンの世界取材・文:飯田有抄Interview 新たな音楽性がまた一つ芽吹き、その個性を輝かせようとしている。紀平凱成、18歳。オリジナル4曲と、カプースチン作品3曲を収めたデビュー・アルバム『Miracle』がリリースされた。「CDが出ると決まったときは、とてもワクワクしました!」と笑顔を見せる。 彼の存在はテレビの情報番組などでも紹介されてきたので、ご存知の方も多いだろう。2歳で自閉症と診断された。一方、当時から抜群の耳の良さを発揮し、父のCDラックからお気に入りを取り出しては、母の電子オルガンでコピーし始めた。「ビートルズやビリー・ジョエル、ガーシュウィンやシューマンが大好きでした。ピアノを始めたのは6歳です」。 レッスンに通い始めて9ヵ月後の発表会では、自らの希望で「イマジン」の弾き語りをした。自分の声のキーに合わせて移調し、周囲を驚かせたという。 「7歳でピアニストになろうと決めました。中学の頃は周りに苦手な音もあったけど、ピアノを弾いているときは安心できるし、優しい気持ちになれました。やる気が出ずイヤになったこともあったけど、僕の音楽をお客さんに聴いてもらえるのは嬉しい」 高校2年生で出演した「eplus LIVING ROOM CAFE&DINING」でのコンサートを通じ、音楽を人に届けたいという意識が強まった。 「ファンの方からお花をいただいたときもすごく嬉しかった。ライヴが好きなので、もっと大きなところで演奏したい」  作曲やアレンジは我流で進め、思いつくフレーズはどんどん楽譜に書き付けてきた。その数1000曲ほど。音数の多いフレーズを、端正でリズミカルな筆致で書く。初アルバムの4曲を含め、いつも英語のタイトルを付けている。 「〈Winds Send Love〉はたくさんの風、〈Tennis Boy Rag〉は楽しいイメージの曲。いろいろなことを、感じ取ってほしいです」 ピュアでありながら意外性のあるハーモニー、流動的で歌うような彼のメロディには、朗らかさが溢れる。 カプースチンを弾き始めたのは4年生のとき。15歳で「カプースチン祭り」に出演したのをきっかけに川上昌裕に師事。今回レコーディングした「サウンズ・オブ・ビッグ・バンド」は彼が初めて弾いたカプースチン作品でもある。 「歯切れの良いスウィングの曲です。ほかの2曲もカプースチンのいろんな曲調が楽しめます。メロディが綺麗だし、リズムや和音が複雑でカッコいい。このアルバムを聴く人には、笑顔いっぱいになってほしい」 ピアノ協奏曲を作り、オーケストラと演奏するのが夢。才能の行方に注目していきたい。三浦一馬(バンドネオン) × ドグマ室内オーケストラ欧州最前線のオケと贈るオール・ピアソラ・プロ文:長谷川京介 若手実力派バンドネオン奏者として各方面から注目されている三浦一馬。2008年、国際ピアソラ・コンクールで日本人初、史上最年少で準優勝を果たし、11年には別府アルゲリッチ音楽祭でアルゲリッチやバシュメットら世界的名手と共演し、絶賛された。埼玉県久喜市出身で、市の親善大使を務める彼が故郷に凱旋する。 初来日となる共演のドグマ室内オーケストラは、04年、ミハイル・グレヴィチにより結成された。ソリストとしての勢いと、団体としての力強さの融合が最2020.2/8(土)15:30 久喜総合文化会館問 久喜総合文化会館0480-21-1799https://www.kuki-bunka.jp/三浦一馬大の魅力だ。三浦は2年前にも彼らとドイツで共演し、大成功を収めた。公演には、ピアニスト、作曲家、アレンジャーとして大活躍の山中惇史も加わる。 曲目はオール・ピアソラ・プログラム。名作「アディオス・ノニーノ」「ブエノスアイレスの冬」をはじめ、大作、バンドネオン協奏曲「アコンカグア」も披露される。アンデス山脈にそびえる名峰の名を持つ躍動感あふれる一曲だ。三浦一馬と気鋭のアーティストたちによる共演は、エキサイティングなものになることは間違いない。紀平凱成 ピアノリサイタル「Miracle」12/23(月)18:30 東京/王子ホール 2020.1/18(土)13:30 大阪/ザ・フェニックスホール問 イープラスkyle-info@eplus.co.jpCD『Miracle』イープラスem-0001 ¥2700+税

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