eぶらあぼ 2019.12月号
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58下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団人気の上野耕平も登場、意欲的な選曲で攻める!文:柴辻純子第594回 定期演奏会 2020.1/15(水)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp/ 刺激的なプログラムが続く読響定期演奏会。2020年1月は、17年3月まで読響の首席客演指揮者を務め、現在広島交響楽団音楽総監督の下野竜也が、約3年ぶりに日本初演2作品を含むこだわりの選曲で登場する。 ショスタコーヴィチ「エレジー」で始まり、現代アメリカを代表する作曲家ジョン・アダムズ「サクソフォン協奏曲」(2013)では、人気上昇中の若手、上野耕平をソリストに迎える。アダムズと言えば、15年に代表作「ハルモニーレーレ」を下野が日本初演以来29年ぶりに読響で取り上げて話題を集めた。今回の「サクソフォン協奏曲」は、子どもの頃からジャズの巨匠たちのレコードを聴いてきたアダムズがそれらを手本に作曲。チャーリー・パーカーのメロディやスタン・ゲッツへのオマージュなど、ジャズの要素満載である。サクソフォンが華やかに駆け巡り、即興風の楽想や超絶技巧が炸裂するこの作品。明晰な音と類まれな技巧、豊かな音楽性で、国内のみならず国際的にも高く評価される上野の、縦横無尽な演奏も大注目だ。 後半の、アメリカのフェルドマン「On Time and the Instrumental Factor」(1969)とロシアの女性作曲家グバイドゥーリナ「ペスト流行時の酒宴」(2005)はともに日本初演。フェルドマンでは静的な音響が揺れ動き、06年にラトルがフィラデルフィア管と世界初演したグバイドゥーリナの作品は、堅牢な響きの迫力に圧倒されるが、そこに浮かぶ旋律は美しい。パワフルな読響と下野の情熱の指揮。新しい音楽との出会いには最高の組み合わせである。上野耕平 ©S.Ohsugiミシェル・ダルベルト(ピアノ) ~ドビュッシー前奏曲集~洗練された芳香と奥深さを味わう文:飯田有抄2020.2/5(水)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp/ その佇まい、存在感そのものがエレガントでインテリジェンス漂うパリ出身のピアニスト、ミシェル・ダルベルト。日本では2006年に放映されたNHKのテレビ番組『スーパーピアノレッスン』の講師、またラ・フォル・ジュルネ音楽祭の出演などを通じ、その芳しく情感豊かな音楽は、広く聴衆を魅了してきた。指揮者としても、室内楽奏者としても、熱心な演奏活動を続けてきた彼は、現在パリ国立高等音楽院の教授として、若い世代にその芸術を伝えている。録音ではシューベルトのピアノ作品全集で注目を集めた印象が残るが、近年ではドビュッシー、フォーレ、フランクといったフランスのピアノ作品集をそれぞれ15年、17年、19年とコンスタントにリリースしている。 そんなダルベルトが20年の来日公演で聴かせるのは、ドビュッシーの前奏曲集全曲である。第1巻と第2巻、合わせて24曲からなる作品だ。形式的な縛りのない、作曲家の独創性があますところなく発揮される前奏曲。ドビュッシーの前奏曲は、その一曲一曲が見事なまでに自由な世界観を提示する。詩人との深い交流があったドビュッシーらしく、「雪の上の足跡」「亜麻色の髪の乙女」「月の光が降り注ぐテラス」「ヴィーノの門」など、自然や人物、建築物などを示すタイトルも美しい。ダルベルトの繊細で奥深い解釈と、ニュアンスとエスプリに富んだ豊かなタッチが紐解く、まるで詩集のようなピアノ作品を、じっくりと味わいたい。©Caroline Doutre下野竜也 ©読売日本交響楽団

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