eぶらあぼ 2019.12月号
57/205

54一柳 慧プロデュース フラックス弦楽四重奏団現代を生きる音楽Ⅱ ーNew Sounds from NYー《系譜》 Family Tree of American Composers 2020.1/11(土)15:00《一柳 慧 弦楽四重奏曲 全曲演奏会》 1/18(土)15:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ0570-015-415  https://www.kanagawa-kenminhall.com/トム・チウ(ヴァイオリン/フラックス弦楽四重奏団)現代を代表するクァルテットが日米の最近作にフォーカスする取材・文:伊藤制子Interview 100曲以上の幅広いレパートリーを持ち、2015年の初来日以来、その瑞々しい演奏で聴衆の心をつかんできたフラックス弦楽四重奏団。神奈川県民ホール開館45周年記念の一環として、一柳慧プロデュースにより2回の演奏会を開く。来日を前にヴァイオリンのトム・チウに取材を行った。 初日の1月11日は、〈系譜〉と題してアメリカの作曲家を中心とした選曲で聴かせる。 「15年の来日コンサートではナンカロウの弦楽四重奏曲第1番が温かく受け入れられたので、今度は第3番を演奏することにしました。次にごく最近の音楽として、エリザベス・オゴネクの『ランニング・アット・スティル・ライフ』と私(トム・チウ)が作曲した『レトロコン』、そしてジャズの巨匠でもあるオリヴァー・レイクの作品で17年に録音した『ヘイ・ナウ・ヘイ』も組み込みました。最後に一柳慧さんの提案でバルトークの弦楽四重奏曲第5番をプログラムに入れています」 気鋭の作曲家オゴネクの作品は「生命力とコントラストに満ちている」楽曲で、13年初演後に改訂された新しい形でお目見えとなる。 1月18日は〈一柳慧 弦楽四重奏曲 全曲演奏会〉。日本初演の第5番を含めた全6曲が演奏される。 「一柳さんの作品のインパクトは次世代にも広がっていて、様々な若い日本人作曲家に影響をもたらしました。東西の広範な音楽的要素を結びつけることに長けていて、そのことが、彼の調和のとれた和声法とモティーフの扱いを生み出しているのです。一柳さんは初期の『フルクサス』(Fluxus:1960年代アメリカの実験的芸術運動)にかかわっていたのですが、フラックス(Flux)という私たちの弦楽四重奏団名はフルクサスに触発されたものです」 弦楽四重奏団として高い水準を保つには、「4人の音楽性を一致させ、音楽表現の共通のあり方を模索していくことが必要」で、「現代音楽は音楽家同士の関係性をはるかに豊かでダイナミックなものに発展させた」という。クァルテットの各奏者は、リーダーやその他の役割を交代で担当しつつ、新たなレパートリーに挑戦し、若手作品の初演にも積極的に取り組んできた。 「最近ではアメリカの作曲家ランド・シュタイガーとジョージ・ルイスの新作を演奏し、2021年にはドイツの作曲家ハンス・タメンによる電子音響作品を初演します。ニューヨークなどで展開されるアヴァンギャルド・ジャズや即興の最新情報も常にチェックしています」 知的好奇心を刺激するフラックス弦楽四重奏団のコンサート。現代を生きる音楽が奏でられる瞬間にぜひ立ち会いたい。いずみホール・オペラ2019《ピグマリオン》フランス・バロックの洗練とかぐわしさが現代人の感性を刺激する文:笹田和人 バロック音楽の先入観を覆す、斬新な和声やリズム、鮮烈な舞台を体感したい。18世紀フランスで独自の成熟を遂げた、母国語と舞踊を重視する総合芸術「オペラ・バレ」。その大成者ラモーの傑作《ピグマリオン》が、世界的バロック・ヴァイオリン奏者にして、指揮者としても活躍する寺神戸亮のプロデュースで上演される。 《ピグマリオン》は、1748年初演。理想の女性像を追求して作り上げた彫像に恋した、彫刻家をめぐる顛末を描く。演出は、気鋭の岩田達宗。タイトルロールに俊英カウンターテナー、ク12/14(土)14:00 いずみホール問 いずみホールチケットセンター  06-6944-1188  http://www.izumihall.jp/左より:寺神戸 亮/クレマン・ドビューヴル/酒井はな 撮影:池谷友秀レマン・ドビューヴルをはじめ、鈴木美紀子、波多野睦美、佐藤裕希恵、とフレンチ・バロックに精通する強力な布陣で臨む。 また、バロックダンスの松本更紗に加えて、コンテンポラリーダンス界から酒井はなと中川賢が登場し小㞍健太による振付での“競演”も実現。管弦楽は、寺神戸の指揮による「レ・ボレアード」が担当する。これに先立ち、ステージ前半では、ラモーの先人リュリによる《町人貴族》などオペラからの舞踊音楽に乗せ、松本が「オペラ・バレ」の変遷を紹介する。左より:トム・チウ、コンラード・ハリス、マックス・メンデル、フェリックス・ファン

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る