eぶらあぼ 2019.12月号
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170CDCDCDワーグナー:タンホイザー、トリスタンとイゾルデ、神々の黄昏、パルジファル/上岡敏之&新日本フィル魅惑の印象派/熊本マリ 他ヴォカリーズ/田中彩子83年のリサイタル/斎藤雅広ワーグナー:《タンホイザー》より序曲とバッカナール(パリ版)、《トリスタンとイゾルデ》より第1幕 前奏曲、第3幕「愛の死」、《神々の黄昏》より第1幕「ジークフリートのラインへの旅」、第3幕「ジークフリートの死と葬送行進曲」、《パルジファル》より第1幕 前奏曲、第3幕 フィナーレ上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団シャブリエ:音楽帳の一頁/グノー:歌劇《ファウスト》より〈鏡の踊り〉/ドビュッシー(ビュッセル編):小組曲 第1曲 小舟で/ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調 第2楽章 他熊本マリ 藤井一興(以上ピアノ) ドミニク・ヴィス(カウンターテナー) 中木健二(チェロ) 小町碧(ヴァイオリン) 大井剛史(指揮) 東京交響楽団 他J.S.バッハ:「ゴルトベルク変奏曲」より〈アリア〉/パガニーニ:カプリース第24番/パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ/フォーレ:ヴォカリーズ・エチュード/ドビュッシー:月の光/ラフマニノフ:ヴォカリーズ/ヴィラ=ロボス:「ブラジル風バッハ第5番」より〈アリア〉 他田中彩子(ソプラノ) 山中惇史(ピアノ) 植木昭雄(チェロ)プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番/フランク:前奏曲 コラールとフーガ/リスト:ラ・カンパネラ/ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ斎藤雅広(ピアノ)収録:2019年5月、サントリーホール&横浜みなとみらいホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00703 ¥3200+税キングレコードKICC-1491 ¥2000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25996 ¥3000+税収録:1983年4月、イイノホール(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7911 ¥2500+税ドイツの歌劇場でのキャリアが長い上岡敏之が、コンビを組んで3年目の終盤に手兵を指揮した、ワーグナー・プログラムのライヴ録音。弦と管が溶け合った柔らかなサウンドで流麗かつ濃密に表出された、日本では滅多に聴けないワーグナー演奏だ。全体に甘美な魅力が横溢。シンフォニックな起伏ではなく、“歌の抑揚”ともいうべきフレージングで奏でられる息の長い音楽が、大言壮語せずして同作曲家の魔力を伝えてくれる。中でも《トリスタンとイゾルデ》は録音によってより美しさが際立っているし、《パルジファル》の精妙にして荘厳な表現にも大いに酔わされる。(柴田克彦)12月15日までは東京都美術館で、その後愛知、神戸と巡回する『コートールド美術館展』にちなんだ「入念な」企画盤。絵画コレクターであると同時に「コートールド=サージェント・コンサート」をシリーズ化しロンドン・フィル創立にも関わったコートールド夫妻に関係した絵画/音楽作品を充実の解説とともに収録した当CD(本作のための新録音多数)、安易なコンピとは一線を画す。ちなみに本展覧会の目玉たるマネ『フォリー=ベルジェールのバー』(ジャケット)は懇意であったシャブリエのピアノの上に飾ってあったそう。むろんこの作曲家の作品も収録、想いを馳せる愉しみ。(藤原 聡)透明なコロラトゥーラで歌い出される、バッハ「ゴルトベルク変奏曲」の主題〈アリア〉は鮮烈かつ衝撃的だ。ウィーンを拠点に、躍進を続ける気鋭のソプラノ、田中彩子の第3弾アルバム。パガニーニやドビュッシーなど、やはり言葉を介さない器楽作品、ラフマニノフやフォーレの〈ヴォカリーズ・エチュード〉ほか歌詞のない歌が、素晴らしい技巧で披露され、“声”の持つ無限の可能性を知らしめる。さらに、同時に収録された“言葉を持つ歌”のイメージすら“変容”されてゆく。最後を締め括るのは、冒頭のアリアのリプライズ。ちょうど「ゴルトベルク」が、そうであるように。 (笹田和人)演奏、企画、トークなどマルチに活躍を続けるピアニストの斎藤雅広。輝きに溢れた若き頃の貴重なアーカイヴ録音をリリース中だが、その第3弾が今回の『83年のリサイタル』である。斎藤だからこそ可能な重量級のプログラムで、テクニック、音色の多彩さを存分に示す。華やかさに注目が集まるが、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」を聴けばわかるように、繊細な表現も非常に魅力的だ。弱音のコントロール、丁寧な楽曲分析から成り立つ構成力など、斎藤の演奏のスケールの大きさを支えるものが様々な要素の複合であることが鮮やかに伝わってくる。 (長井進之介)SACD

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