eぶらあぼ 2019.12月号
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168CDCDショパン:スケルツォ、即興曲/藤田真央ヴァイオリンとチターの出会い/ヴィルフリード・シャルフ&吉田美里ドビュッシー:前奏曲集 第1巻&第2巻/パスカル・ドゥヴァイヨンそして、それが風であることを知った/神田寛明&佐々木亮&早川りさこショパン:即興曲第1番~第4番(幻想即興曲)、演奏会用アレグロ(協奏曲のアレグロ)、スケルツォ第1番~第4番藤田真央(ピアノ)ブラームス:ハンガリー舞曲第5番/ヴィヴァルディ:フルート協奏曲「ごしきひわ」より〈カンタービレ〉/ツェラー:喜歌劇《小鳥売り》より〈チロルの薔薇〉/ショスタコーヴィチ:「ジャズ組曲第2番」より〈ワルツ第2番〉/カラス:『第三の男』より〈ハリー・ライムのテーマ〉/ジチンスキー:ウィーン、わが夢の街 他ヴィルフリード・シャルフ(チター)吉田美里(ヴァイオリン)ドビュッシー:前奏曲集 第1巻、同 第2巻パスカル・ドゥヴァイヨン(ピアノ)ドビュッシー:フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ L.137/武満徹:そして、それが風であることを知った/イベール:2つの間奏曲/ジョリヴェ:小組曲神田寛明(フルート)佐々木亮(ヴィオラ)早川りさこ(ハープ)ナクソス・ジャパンNYCC-27311 ¥2500+税コジマ録音ALCD-9203 ¥2800+税マイスター・ミュージックMM-4068 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCL-00707 ¥3200+税藤田真央の新譜はショパン作品集。4つの即興曲と4つのスケルツォ、そして「演奏会用アレグロ」op.46という珍しい作品をアルバム中央に配した。透明感から深みまで多彩な音色を聴かせる即興曲、さりげなくコントラストの効いたテンポ設計のスケルツォ、白眉は何と言っても、勇壮さとロマンティシズムを併せ持ち、長大さをものともせず見事にまとめ上げた大曲のアレグロ。縦軸(声部ごとの立体感)と横軸(移り行く和声感・旋律の語り)それぞれのダイナミックレンジの解像度も精密かつ精彩で驚かされる。音楽への誠実さと閃きとが共存する優れた演奏。  (飯田有抄)ソリストとしてウィーン・フィルのニューイヤーに出演し、指導者としてはチターのクラスを開設してその技を伝えるなど、チターの第一人者として広く活躍するヴィルフリード・シャルフ。ウィーンで長く学んだヴァイオリニスト吉田美里と共に、ユニークなアルバムを完成した。両楽器の“出会い”は珍しいが、ウィーンをよく知る彼らの肩の力の抜けた演奏で、同地の家庭や居酒屋で聴いているかのような心地よさ。有名な『第三の男』のテーマをはじめ、チターのソロによる4曲はさらに聴きもので、独特の鄙びた雰囲気がいい。懐かしさを誘うチターの音色を味わう1時間となる。(林 昌英)フランス生まれの名手、パスカル・ドゥヴァイヨンが、得意とするドビュッシーのピアノ作品の傑作「前奏曲集」第1巻、第2巻を録音。ドゥヴァイヨンは、角がとれた深みのある音を慎重に重ねていく。いくつもの色を混ぜ合わせたかのような低音が響く「沈める寺」や、要所の音の後に、描いたものの残像が見えるような「霧」や「花火」などは、特に印象的。適所で自然の音やさまざまな楽器を思わせるサウンドが鳴らされる様は、名人技と呼びたくなる。色彩は軽やかであるのに、同時に重心の低い音が、小品一つひとつの世界を丁寧に表現していく。  (高坂はる香)NHK交響楽団のトップ奏者によるフルート(神田寛明)&ヴィオラ(佐々木亮)&ハープ(早川りさこ)という稀有なアンサンブルによる魅惑のCD。晩年のドビュッシーがこのトリオのために書いたソナタは、音の色彩と香りを自在に変化させた3楽章からなるミステリアスな物語。エミリー・ディキンソンの詩からタイトルを得た武満徹のアルバム表題曲では、淡く柔らかい音色が芳醇なイメージを紡ぎ出す様が圧巻。イベールによる演劇の付随音楽ではバロック風で南欧風な2つのテイストを、ジョリヴェの小組曲ではフルートに超高度な技術を強いる5曲目が特に聴きどころだ。(東端哲也)CDSACD

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