eぶらあぼ 2019.11月号
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74©momoko japanアルディッティ弦楽四重奏団 × 小㞍健太11/30(土)15:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-ongakudo.com/12/1(日)17:00 愛知県芸術劇場(小)問 愛知県芸術劇場052-971-5609 https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/小㞍健太(ダンサー/振付家)ダンスと現代音楽の交錯が生み出す未知の領域取材・文:乗越たかおInterview 難解と思われがちな現代音楽を、卓越した技術で親しみやすいコンサートとして紹介し、世界的に人気が高いアルディッティ弦楽四重奏団。そしてこれまた世界に冠たるオランダのNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)で活躍したダンサー小㞍健太とのコラボレーションが神奈川県立音楽堂と愛知県芸術劇場で行われる。 曲目も非常に興味深い。まずは細川俊夫の新作と、西村朗「弦楽四重奏曲 第6番〈朱雀〉」だが、この2曲は演奏のみ。後半のヴォルフガング・リーム「弦楽四重奏曲 第3番〈胸裡〉」「Geste zu Vedova ~ヴェドヴァを讃えて」の2曲を踊る小㞍に話を聞いた。 「リームの曲は『圧』が強いというか(笑)。とくに『胸裡』はリームの初期の作品で、時代に対する反抗心や野心のようなものが前面に出てギラついている。今回、曲をより深く理解したくて、音楽の専門家からレクチャーを受けているんです。そしてこの曲の様々な断片が実はつながっているなどの気づきがあり、曲想の奥に一歩踏み込めた感触があります」 もうひとつの、前衛画家エミリオ・ヴェドヴァへ贈られた「ヴェドヴァを讃えて」はどうなのだろうか。 「この曲は最近の曲で、さすがに初期のギラギラした感じはないですね。聴きやすいのですが繰り返しが多く、そのまま踊ると単調になるおそれがあり、聴けば聴くほど難しい。そもそもヴェドヴァの絵は、思い切り振るような筆致や斬新な色使いも含めて、非常に『身体的な絵』だと思うんです。そこでダンスの方の身体性を少し変えたくて、知人のプログラマーに依頼して楽譜をデータ化し、ダンススコアのようなものを作る実験をしています。まあ本番は音楽とのやりとりで自由に踊る部分も多くなると思いますけど」 アルディッティ弦楽四重奏団との共演には、小㞍自身も大いに燃えているという。 「こんな素晴らしいアーティストとがっぷり四つに組める機会は、そうないですからね。ライヴの演奏とダンスが、一つの曲を通して同じ空間を観客と共有する。そこで起こる反応や化学変化を重視していきたい。観客の想像力を増幅させていくような舞台にしたいですね」 神奈川県立音楽堂は今年リニューアルを終え、音の響きも良くなったと好評だ。日本初の公共音楽専門ホールであり、今年は65周年の節目でもある。 「僕自身、創作は続けますが、年齢的にダンサーとしての節目を迎えつつあると思っています。ソロなので逃げ場もないですし、全霊を込めて、これまでにない姿をお見せしたいと思います」第150回 リクライニング・コンサート 中野翔太 ピアノ・リサイタル俊英のボーダーレスな感性を存分に味わう文:笹田和人 音楽ホールとして、初めてリクライニングが可能なシートを設置したHakuju Hallが、2003年の開館直後に始めた「リクライニング・コンサート」。ゆったりと寛ぎながら名演が楽しめるという、新たな音楽との付き合い方を提案し、聴衆からは「普段は気づかない音を発見できる」と好評を得て、このたび150回目を迎える。 その節目には、クラシックを土台としつつ、ボーダーレスな活躍を続ける多才の俊英ピアニスト、中野翔太が登場する。ジュリアード音楽院に学び、ヴァ11/21(木)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター  03-5478-8700https://www.hakujuhall.jp/©Yuujiイオリンの巨匠イツァーク・パ―ルマンに室内楽を師事。リサイタル活動や国内外の一線楽団と共演の一方、ジャズ・ピアニストの松永貴志とのデュオや作・編曲なども手掛ける。 今回のステージでは、モーツァルト「幻想曲ニ短調」やラヴェル「水の戯れ」、ケージ「ある風景の中で」から、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」「サマータイム」、ピアソラ「リベルタンゴ」まで、自身による編曲も交え彩り豊かに披露する。極上の時間が約束されている。

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