eぶらあぼ 2019.11月号
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71東京芸術劇場 海外オーケストラシリーズエサ=ペッカ・サロネン(指揮) フィルハーモニア管弦楽団オリンピックイヤー年初にサロネン芸術の集大成と向き合う文:山田真一2020.1/23(木)、1/28(火)、1/29(水)各日19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 https://www.geigeki.jp/ 2020年オリンピックイヤー年初のビッグイベントが東京芸術劇場で開催される。エサ=ペッカ・サロネン率いるフィルハーモニア管弦楽団による来日ツィクルスだ。これまでも度重なる来日で両者の息の合った演奏と、サロネンの他人には真似できない指揮ぶりは音楽ファンを唸らせてきたが、今回はその集大成ともいうべき内容だ。というのも20/21シーズンを最後にサロネンがフィルハーモニア管の首席指揮者を退任することが決まっているからだ。その退任前の熟した演奏を日本で聴くことができるのは実に幸運なことである。 3種のプログラムには、ラヴェル「クープランの墓」、ストラヴィンスキー「春の祭典」、ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番(独奏:庄司紗矢香)」、マーラー「9番」など日本でも人気のある作曲家、作品がずらりと並ぶ。いずれもオーケストラの多様な色彩やダイナミズムを存分に楽しめるものばかりだ。マーラーは何度でも聴きたい作品だろうし(1/29)、庄司が登場する日のメインは、サロネンが若い頃から十八番とするストラヴィンスキーの「火の鳥」だ(1/28)。また、作曲家としても21世紀に入ってから急速に評価を高めているサロネン自身のチェロ協奏曲を、北欧の巨匠トゥルルス・モルクのソロで聴けるのも嬉しい(1/23)。彼の作品を未聴の方は「21世紀の作品!?」と一歩引くかもしれないが、初めて聴いても直感的に楽しめる聴きやすさが特徴だ。サウンドは21世紀のシベリウスとでも言いたくなるようなクールさがある一方、現代的な技巧に溢れている。ぜひこの機会にサロネンの新しい側面も楽しんでもらいたい。波多野睦美 歌曲の変容シリーズ 第13回 3人の作曲家 × 3人の演者~モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルト~女性3人が創り出す予測不能の美学文:宮本 明11/12(火)19:00 王子ホール問 王子ホール チケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp/ 2005年にスタートした、メゾソプラノ波多野睦美の「歌曲の変容シリーズ」(王子ホール)は、さまざまな切り口のテーマで歌の諸相を映し出し、その本質を探り当てて見せてくれるような好企画。その第13回となる11月の公演は、「3人の作曲家 × 3人の演者~モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルト~」。 最近、コンサートや録音で、高橋悠治との「冬の旅」に継続して取り組んでいるが、それでもドイツ歌曲を歌う波多野はレアだろう。それだけでも聴き逃せない感がひしひしと迫ってくるのだが、まだまだいろいろ用意されているのがこの「変容」シリーズ。あなたも公演タイトルの「3人の演者」というアピールが気になったはず。 まず、共演ピアニストは台湾の注目株ジュリア・スーだ。ピーター・ゼルキンとのデュオは世界中で引っ張りだこ。16年に初来日して、 武満徹の没後20年コンサートで高橋悠治との2台ピアノで「夢の引用」を弾いた。二人は昨年11月にドビュッシーで初共演。波多野は彼女を「自然な響き。温かい海の水のような音。鮮やかで繊細な音楽に魅了された」と評している。今回は歌曲の伴奏だけでなく、ソロでベートーヴェンの「月光」と「告別」も弾く。 そしてもう一人。コンテンポラリーダンスの辻田暁が音楽とコラボする。現時点で発表されている辻田の共演パートはシューベルトの「魔王」。三者がどんな絡み方を見せてくれるのか、ダンスの出番が他にもあるのかは、当日会場でのお楽しみだ。辻田 暁フィルハーモニア管弦楽団エサ=ペッカ・サロネン ©katja Tähjäジュリア・スー波多野睦美 ©Toshiyuki Kohno

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