eぶらあぼ 2019.11月号
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67第9回大阪国際室内楽フェスタ グランプリ・コンサート2019デュオ・プロコピエフ・ダフチャンシベリア発の熱気に満ちた斬新なデュオサウンド文:笹田和人11/17(日)14:00 トッパンホール問 日本室内楽振興財団06-6947-2184/アーツ・プラン03-3355-8227http://www.jcmf.or.jp/ ※全国公演の詳細は左記ウェブサイトでご確認ください。 哀愁と情熱、上質な諧謔が交錯する、独特のサウンドを堪能したい――。 一昨年に開かれた「第9回大阪国際室内楽フェスタ」で、第1位にあたるメニューイン金賞と、フォークロア特別賞を受賞した「デュオ・プロコピエフ・ダフチャン」は、バヤン(ロシア式アコーディオン)とドムラ(ロシア伝統の撥弦楽器)によるデュオ。全国10ヵ所を巡るツアー「グランプリ・コンサート」で、高い技巧と深い音楽性、エンターテインメント性を兼ね備えた妙技を披露する。 3年ごとに開催されている、「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」。弦楽四重奏など編成を定めた「コンクール」、2~6人の範囲で楽器も人数も自由な「フェスタ」という構成で、それぞれで第1位を獲得した団体による「グランプリ・コンサート」は、日本各地の人々に室内楽の楽しさと奥深さを伝えるとともに、次代を担う子供たちへ身近に音楽を体験してもらうため、1994年から毎年開催されている。 同デュオは、2010年に結成。メンバーのニコライ・プロコピエフ(バヤン)とアルチョーム・ダフチャン(ドムラ)は、共にシベリア出身で、その中心都市ノヴォシビルスクを拠点に国際的な活動を続けている。ステージでは、日本でもおなじみの民謡「一週間」に基づくニコライ・ブダーシュキン「ロシアン・ファンタジー」や、チャイコフスキー「四季」からの名旋律など、自国の調べを軸に。さらに、ヘンデルやモーツァルトなどクラシックから、ピアソラのタンゴ、アメリカ民謡まで、多彩な調べを独特の味付けで聴かせる。ジャン=クロード・ペヌティエ(ピアノ)ドビュッシーとショパンに聴く詩情溢れるピアニズム文:飯田有抄11/8(金)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ ジャン=クロード・ペヌティエがトッパンホールで日本初の本格リサイタルを開いたのは2014年。ほんの5年前、彼が72歳を目前にしたタイミングだったのは意外に思われるかもしれない。ラ・フォル・ジュルネ音楽祭の出演が多く、日本でも着々とファンを増やしているペヌティエ。16年5月と17年10月は体調不良や怪我のためリサイタルを見送ったものの、いずれもキャンセルではなく延期という形で、7ヵ月後にはトッパンホールに登場し、約束のプログラムを聴かせてくれたことは記憶に新しい。今年は5月のラ・フォル・ジュルネに出演し、マスタークラスも精力的にこなした。5回目のトッパンホールでのリサイタルは間もなくだ。楽しみでならない。 今年のプログラムは、ドビュッシーとショパンという組み合わせである。ドビュッシーはホールからのリクエストであり、ショパンはペヌティエ自身の希望とのこと。「月の光」や「パスピエ」が入ったドビュッシーの名曲「ベルガマスク組曲」で幕を開け、若き日のショパンによる最初の4つのマズルカop.6へとつなぐ。晩年の「舟歌」へと移り、同主調のノクターン第14番嬰へ短調へという美しい流れ。ドビュッシーは後半にも「版画」と「ピアノのために」を取り上げる。繊細さだけではない、時に骨太で、時に流麗な、立体感あふれるペヌティエのピアニズムを、じっくりと堪能できそうなプログラムに、大いに期待が膨らむ。

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