eぶらあぼ 2019.11月号
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62©進藤綾音山中惇史 ピアノ・リサイタル ~刻印された時、風景~11/28(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617 http://www.tvumd.com/山中惇史(ピアノ/作曲/編曲)僕は作曲家でもピアニストでもなく、ひとりの音楽家でありたい取材・文:池田卓夫Interview 2019年11月28日、浜離宮朝日ホールでピアノ・リサイタル「刻印された時、風景」を開く山中惇史。東京藝術大学音楽学部の作曲科、修士課程作曲専攻を修了し、29歳の現在は器楽科ピアノ専攻に在学中。「3度目の大学生活です」と笑う。来年をめどにパリへ留学、さらにピアノの腕に磨きをかけるという。 「あなたは作曲家ですか、ピアニストですか?」との問いかけにしばしば出くわすが、「自分が何であるかは考えず、ただ音楽家でありたい」と願っている。今後は年1回のペースでリサイタルを開くと決めたが、「あくまでプログラムありき。『これで行こう』という柱や流れが見つからなければ、できないかもしれません」と、こだわりをみせる。今回は、昭和の大アーティスト、岡本太郎(1911~96)に触発されて書きおろす「太郎の時」3部作(プロムナード/太郎の赤/ジャズの時)世界初演の前後にJ.S.バッハ、ショパンを置いた前半、そして後半にムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を配し対比させる。 「岡本太郎を知ったきっかけは、作品ではなく発言集です。東京・南青山の記念館を訪れると、強烈な赤が目に飛び込んできました。パネルに記された『芸術には過去も未来もなく、今しかない』の言葉に触れ、自分もこういう気持ちで作曲、演奏したいと思いました」。岡本がピアノをたしなみ、ジャズを弾く瞬間にも「今しかない」と興じていたと知り、専門か否かに関係なく今を生き続ける姿勢に共感、「ちょうど『展覧会の絵』を弾きたいと考えていた自分の気持ちにも合致したのです」。ムソルグスキーの名曲を象徴する「プロムナード」を自作の題名に取り込む一方、単独で取り出し、リサイタルの冒頭に弾くことも考えている。 「『プロムナード』の拍子からして当時の作曲一般のセオリーからかけ離れていて、ムソルグスキーが面白がりながら書いていると、直感しました。僕が作曲する際、色々と勉強して書くわけですが、時にはそれが邪魔になることもあります。ムソルグスキーはそうしたものを全部かなぐり捨て『展覧会の絵』 を完成したのが素晴らしいです。有名な赤ら顔の肖像画の印象が強すぎ、長くヘッポコ作曲家と誤解していたのですが、自筆譜を見て、僕のムソルグスキー像は一変しました。真剣に音楽と向き合い、完全にわかって書いていたのです。岡本太郎にも通じる真剣勝負をお伝えするためにも、ホロヴィッツらの手が加わっていない原典版で演奏します」  興味深いリサイタルになりそうだ。第490回 日経ミューズサロンチェコ少女合唱団《イトロ》 クリスマス・コンサートクリスマスの名曲とチェコのナンバーを集めて文:笹田和人 「全合唱団の上演様式に革新をもたらした」と絶賛される、究極のハーモニーを体感したい。チェコ少女合唱団《イトロ》は、昨年までに国際コンクールで35回も優勝を飾り、ヨーロッパやアジアでツアーを重ねるなど、世界的に活動を展開する女声コーラスの名門。ひと足早い、歌声のクリスマス・プレゼントを届けてくれる。 ボヘミアの古都フラデツ・クラーロベーで、1973年に創設。6つの予備課程で学ぶ約350人のうち、ステージに立つことを許されるのは、選抜された11/25(月)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227http://www.nikkei-events.jp/30人のみだという。14回のアメリカ・ツアーをはじめ、世界中で活躍。グループ名は、チェコ語で「朝焼け」を意味する。 77年から芸術監督と首席指揮者を務める、イジー・スコパルに率いられての来日。ピアノの名手ミハル・フロバークの共演で、「きよしこの夜」「ジングルベル」「もろびとこぞりて」などクリスマスの名曲をはじめ、ドヴォルザークの新世界交響曲から「ラルゴ」、スメタナ「モルダウ」ほか自国チェコの名旋律もたっぷりと聴かせる。

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