eぶらあぼ 2019.11月号
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47デイヴィッド・ロバートソン(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団バロックと現代を結ぶ冴えたプログラミング文:山田治生第614回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉12/6(金)19:15、12/7(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp/ アンサンブル・アンテルコンタンポランやセントルイス交響楽団の音楽監督を歴任し、現在、シドニー交響楽団の首席指揮者を務めるデイヴィッド・ロバートソンが新日本フィルに客演し、12月にふさわしいコレッリの「クリスマス協奏曲」を中心に、バロックと現代をつなぐプログラムを指揮する。 現代音楽を得意とするロバートソンが選んだのはストラヴィンスキー。彼の新古典主義時代を代表する2作品が演奏される。協奏曲「ダンバートン・オークス」は、バロックの合奏協奏曲を模した作品。明快かつモダンなテイスト。「プルチネッラ」は、イタリアのコンメディア・デッラルテに登場するプルチネッラを主人公とし、ペルゴレージらが残した音楽を素材にバレエ音楽として作られ、後に組曲にまとめられた。これも独奏楽器を交えた合奏協奏曲的な音楽となっている。 バロック音楽では、コレッリの合奏協奏曲ト短調「クリスマス協奏曲」とともに、ヘンデルの合奏協奏曲ト長調op.6-1、オルガン協奏曲第1番が演奏される。オルガン協奏曲では、日本を代表するオルガン奏者、水野均が独奏を務める。 この演奏会のキーワードに「合奏協奏曲」が挙げられよう。新旧の合奏協奏曲的作品を対比させつつ、才人、ロバートソンが、オーケストラの定期演奏会で演奏されることがすっかり少なくなったバロック音楽をどのように奏でるのか、興味津々だ。また、新日本フィルの首席奏者たちの妙技が楽しみである。アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団深刻なサウンドと古典の明朗なトーンが絶妙にマッチする文:江藤光紀第892回 定期演奏会Cシリーズ 12/8(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第893回 定期演奏会Aシリーズ 12/9(月)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ 今秋にはNDRエルプフィル首席指揮者の仕事がスタートするなど、近年のギルバートの活躍ぶりは目を見張るばかり。首席客演指揮者の任にある都響との公演でも、ここぞというところで思い切るリードにオケがハイテンションで応え、まさに“いま、聴いておかなければならない東京のコンビ”の筆頭へと駆け上がりつつある。12月には二つのプログラムを引っ提げて登場するが、定期A、Cシリーズは選曲の妙でも楽しませてくれそうだ。 まずはリストの「悲しみのゴンドラ」の管弦楽版。ワーグナーの死を予感して書かれたこのピアノ曲の不安定で重苦しい気分は、遠く20世紀の音楽を先取りしているが、現代のオーケストレーションの魔術師アダムズが、さらに濃厚な油彩画へと仕立て直している。 20世紀初頭に書かれたバルトーク「ヴァイオリン協奏曲第1番」は、その延長にすっと入ってくるはず。独奏は長きにわたって都響をソロ・コンマスとして引っ張ってきた矢部達哉。以心伝心の独奏とオケをギルバートがどこへ引っ張っていくか。 後半は打って変わって、音楽の優雅さやユーモアが味わえる。日本初演となる「クープランからの3つの習作」は、バロックの作曲家クープランのクラヴサン曲を現代英国の作曲家アデスが管弦楽へと移し替えたもの。基本的な進行は保ちつつも、単なる編曲を超えたアイディアが満載で、薄いオーケストレーションなのに音楽が多彩に輝くことに驚くだろう。交響曲の父ハイドンはユーモアを様々に音化したけれど、この日取り上げられる交響曲第90番でも思いがけない脱線が待っているはずだ。水野 均デイヴィッド・ロバートソン ©Chris Lee矢部達哉 ©T.Tairadateアラン・ギルバート ©Peter Hundert

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