eぶらあぼ 2019.11月号
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロを披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。びわ湖ホールPreviewびわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/新年の幕開けは笑いと名旋律に溢れるウィンナー・オペレッタの最高傑作《こうもり》を満喫したい 文:岸 純信 (オペラ研究家)びわ湖ホールオペラへの招待 J.シュトラウスⅡ世《こうもり》2020.1/10 (金)、1/11(土)、1/12 (日)、1/13 (月・祝) 14:00 全日 びわ湖ホール (中)ボにはまってしまう。そこがこの演目の醍醐味なのである。 今回のびわ湖ホールの公演は、日本語訳詞によるもの。セリフのやり取りが多く、巷で話題のニュースにちなんだアドリブが飛び交うのもオペレッタでは日常茶飯事なので、字幕システムよりも訳詞上演の方が、ドラマがすんなりと入ってくるだろう。また、今回は指揮者と演出家はヴェテラン同士のタッグ、秋山和慶と中村敬一を中心に、ダブル・キャストの歌手勢が豪華な布陣で纏められているのも注目の的である。 まずは、主人公の紳士アイゼンシュタインを「びわ湖ホール四大テノール」の名物男、二塚直紀と声楽アンサンブル所属の若き谷口耕平、その妻ロザリンデは日本を代表するプリマドンナの森谷真理と声楽アンサンブルの実力派、船越亜弥がそれぞれ競演。主人公をこっそり懲らしめるファルケ博士の役に京都出身の大バリトン黒田博と見事オーディションで抜擢された新人の市川敏雅、「びわ湖ホール四大テノール」の関西のホープたる清水徹太郎もロザリンデの元彼アルフレードで舞台を賑わせる。また、きゃぴきゃぴした小間使いのアデーレ役をアンサンブル所属の二人、熊谷綾乃と平尾悠が分け合うのも見どころの一つだろう。現役最前線の名歌手たちのエネルギッシュな歌いぶりから、新進勢の爽やかで初々しい個性まで、《こうもり》ならではの和やかな笑いのステージで気軽に楽しんで欲しい。 企画力に富む舞台を作り続け、「オペラを愛する人々の裾野を広げたい!」と大いに意気込むびわ湖ホール。中でも、2007年から続く「オペラへの招待」シリーズでは、公共ホール初の劇場専属の声楽家集団となる「びわ湖ホール声楽アンサンブル」が練り上げたパフォーマンスを披露することで、ファン層の注目を集めている。オペラで何より大切なのは、歌と演技の緊密なやりとり。欧米の大劇場でも日本のオペラ界でも、専属アーティストたちがみっちりと稽古してこそ、流麗なステージングが誕生する。びわ湖ホールの恵まれた環境のもと、声楽アンサンブルの面々が実力を大いに発揮するさまを、筆者もこれまで何度も目にしてきた。 そこで、彼らが来年1月に上演するオペレッタ《こうもり》について紹介してみよう。日本ではオペレッタとは「喜歌劇」と訳されるが、セリフを交え、恋愛話や社会風刺を中心に、楽しい笑いを繰り広げるオペラの一ジャンル、それがオペレッタである。今回の《こうもり》は、ウィーンのオペレッタを代表する名作であり、世界中で上演が続く文字通りの人気演目である。 《こうもり》の作曲者はワルツ王の呼び名で知られるJ.シュトラウスⅡ世。物語は、倦怠期の中年夫婦が共に浮気心を露わにするものの、結局は元のさやに収まって、皆で朗らかに笑いあうというもの。ロシアから来たワガママ大貴族やこましゃくれた小間使い、パーティー好きの刑務所長と飲んだくれの刑務官など、脇を固めるキャラクターも非常に個性的なので、彼らの細かいやりとりが、いちいち観る人のツ秋山和慶中村敬一 © Keiichi KIMURA森谷真理 ©武藤 章船越亜弥谷口耕平二塚直紀

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