eぶらあぼ 2019.11月号
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41美しい床のホワイエ山形の「紅花」をデザインした緞帳Information問 山形県総合文化芸術館 開館準備事務所023-664-2220  https://yamagata-bunka.jp/オ」を2つ完備し、発表会やミニコンサート、またダンス練習の会場として使用できるのも嬉しいところだ。細部に宿る郷土の誇り だが、ドイツの建築家、ミース・ファンデル・ローエがいみじくもいったように、「神は細部に宿る」。そしてこのホールは、その言葉を地で行っている。 たとえば、訪れる人がまず目にする1階ロビーの壁の一部に、釘を一切使わずに精巧に組み上げられた伝統の組子細工「山形組子」が使われ、エントランスには、山形を南北に貫流する最上川の流れをデザイン化した絨毯も使われている。 訪れた人が、これから始まる公演や催しに向けて、心を高ぶらせることができるかどうか。それは、ホールがどう出迎えてくれるかに左右される。だから嬉しい気配りだが、これらの意匠の価値はそれだけにとどまらない。東西の文化の融合がよく叫ばれるが、伝統の根のないところに輸入文化を接ぎ木しても根差さない。その意味でも、心憎いばかりの工夫である。 また、このホールは、奥に足を踏み入れるほど細部が輝くのが特徴だ。大ホールの客席は、木目や素材の色を保ちながら強度とデザイン性に富んだ家具づくりの独自の技術をもつ天童市の木工業者が手がけ、椅子の布地には、県内に伝わる日本三大刺し子の一つ「庄内刺し子」を活かした米沢織が使われている。 また、間口20メートルの舞台にかけられる、幅22メートル、高さ13メートルの緞帳のデザインは、山形市出身の世界的な工業デザイナーで、フェラーリのデザインなども手がけた奥山清行に託された。タイトルは「紅―BENI―」。山形を象徴する紅花と自然をモティーフに、182色の糸を用いて郷土の過去、現在、未来が鮮やかに描かれている。また、それを織物として具現化するために、県下山辺町にある高級絨毯メーカーの、世界に誇る山形緞通のぼかし技術が用いられた。 広く世界の文化や芸術を味わうためには、母国や故郷の伝統や文化を深く理解することが大事で、そういうバックグラウンドがあってこそ、輸入された文化の価値も奥底から理解できる――このヨーロッパの国々でよく耳にする価値観が、山形県総合文化芸術館には細部にまで宿っている。 12月のプレオープンを経て、来春以降ここではクラシック音楽のコンサートに、バレエ、本格的なオペラ上演と、垂涎の催しが目白押しである。これについては次号12月号でご紹介する予定。そうした公演を歴史の伝統に育まれた文化の回廊でつながれた、神が宿るほど細部にまでこだわったホールで観賞できる。山形とはなんと幸福な文化都市であることか。文:香原斗志

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