eぶらあぼ 2019.11月号
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195部屋なら1泊11,000w(約1,000円)とこちらも激安。 シンガポール「グッドマン・アーツ・センター」は、伝統からコンテンポラリーにいたる舞踊・音楽・文学等、50近いカンパニーがレジデンスしている、文字通り文化の拠点だ。このなかにいちダンサーが立ち上げたインディペンデントなダンススペースがあり、一時間単位で様々なアーティストが格安料金でスタジオを借りて自由に交流するようになっている。 中国「上海国際ダンスセンター」は先月書いたばかり。フェスティバルから学校、様々なプログラムで、中国という巨大な国の多様性をさらに混淆させるエンジンのような役割を担っている。 これらを見てわかるのは、「ただひとつの正解」などはない、ということだ。文化の成り立ち、国民とアートの距離感、そしてそのダンススペースが何を最も重要な目的としていくのか……といった様々な条件から自分たちのベストを探っていかなければならない。 もともと内部資料として依頼された報告書だが、9月のトークの時に希望する観客にも進呈することが急遽決定。9月中に発行するためどえらい作業になったものの、我ながら充実の内容となった。「私も読みたい」という要望もいただいているのだが、財団側の対応が決まったらお知らせしたい。 さて10月は17日間ヨーロッパだ。イタリアのマテーラとレッジョ・エミリア、そしてスペイン・カナリア諸島のMASDANZAフェスで審査員を務めてくるよ!第61回 「世界のダンススペースのユニークなあれこれ」 ここ数年、暗いニュースばかりだったダンス界だが、久しぶりに明るいニュースがある。来年春、横浜に新しいダンススペースが開場するのだ。コンテンポラリー・ダンスの支援のために新しく作られたセガサミー文化芸術財団が、馬車道の駅近くにある旧帝蚕倉庫内をリノベーションして作る「Dance Base Yokohama(仮)」である。 これに先立って、オレは内部資料として「世界のユニークなダンススペース」についての報告書を依頼された。6ヵ国6スペースのユニークな取り組みについてまとめたので、そのさわりをちょっとご紹介しよう。 イギリス「サドラーズ・ウェルズ劇場」は、普通の劇場が「レセプション・ハウス(作品を買い付けて上演する)」なのに対して、「プロデュース・ハウス(自らアーティストを育て、作品を創って、売り出す)」である。ヒット作品も多く、じつに収入の7割がチケット収入だという驚異の劇場。 イスラエル「スザンヌ・デラル・センター」は上演と国際フェスティバルに特化している。「教育はしない。そのかわり素晴らしい作品があれば、責任を持って世界に紹介していく」というスタイル。 フランス「モンペリエ国際ダンス・センター」は、国中にある国立振付センター(CCN)の中でも、現在の芸術監督クリスチャン・リゾがディレクターを引き継いだ際に、国際振付研究所(ICI)と改名した。「芸術監督は現役のアーティストでなければならない」などユニークな決まりがあり、リゾはビジュアル・アート出身でバリバリのダンス出身ではないため、「ダンスと顔の動きの練習」等の変わったプロジェクトも邁進中。 韓国「ソウル・ダンス・センター」はダンス専門のレッスン&リハーサルに特化している。特徴は値段の激安さで、約4時間借りても16,500w(約1,500円)。おまけにレジデンススペースも完備されていて、1人Proleのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com/乗越たかお

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