eぶらあぼ 2019.11月号
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180CDCDCDドヴォルザーク:後期三大交響曲 他/稲島早織&大石真裕アフロディテの解剖学〈切断・解体・再構成〉~瀬川裕美子ピアノリサイタル Vol.6&7 ライブ~カプースチン:ピアノ協奏曲 第5番、六重奏曲 他/川上昌裕アンコール!/ヴォルフガング・ダヴィッド&梯剛之ドヴォルザーク:序曲「わが故郷」、劇的序曲「フス教徒」、交響曲第7番~第9番「新世界より」稲島早織 大石真裕(以上ピアノ)ピート=ヤン・ファン・ロッスム:amour/ストラヴィンスキー:ピアノ・ソナタ/モーツァルト:幻想曲ハ短調 K.396(断片)/クセナキス:ヘルマ―ピアノのための記号論的音楽―/近藤譲:三冬/J.S.バッハ:パルティータ第6番/ブーレーズ:12のノタシオン~第2曲 他瀬川裕美子(ピアノ)カプースチン:ピアノ協奏曲第5番、10のインヴェンション、カプリチオ、六重奏曲「イントラーダとフィナーレ」川上昌裕(ピアノ) 大塚茜(フルート) 吉川直貴(オーボエ) 菊池武文(ヴィオラ) 佐藤洋嗣(コントラバス) 重本遼大郎(ドラム) 飯森範親(指揮) 日本センチュリー交響楽団クライスラー:ウィーン奇想曲、愛の喜び、美しきロスマリン/チャイコフスキー:「懐かしい土地の思い出」より〈メロディー〉/ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリー舞曲第7番/ドヴォルザーク(クライスラー編):スラヴ舞曲第1番/サラサーテ:アンダルシアのロマンス 他ヴォルフガング・ダヴィッド(ヴァイオリン) 梯剛之(ピアノ)コジマ録音ALCD-7242,7243(2枚組) ¥3400+税収録:2018年1月&19年3月、トッパンホール(ライヴ)トーンフォレストTFCC-1903 ¥2000+税収録:2018年11月、ザ・シンフォニーホール(ライヴ) 他オクタヴィア・レコードOVCT-00163 ¥3000+税収録:2013年12月、JTアートホール アフィニス(ライヴ) 他ソナーレ・アートオフィスSONARE1045 ¥2400+税稲島&大石のデュオはすでに「わが祖国」のディスクで高い評価を得ているが、今回もドヴォルザークの管弦楽序曲2作+後期三大交響曲という、巨大な、しかも稀な演奏にチャレンジしている(「新世界」以外は世界初録音)。もちろんピアノ連弾だと音楽の輪郭がはっきりし、ドヴォルザークの思考がどう発展していったのかが明らかになる。でもそれはこのディスクの美質の一つに過ぎない。素朴な歌心、細やかなニュアンス、力強い推進力を備えた彼らの表現に、聴き進めるにつれて編曲という意識が消えていった。大作を乱れなくまとめ、独自の世界にまで高めた点に、最も大きな意義があるだろう。(江藤光紀)パウル・クレーの2つの絵画作品をテーマに開いた2公演のライヴ録音を、クレーの別作品「アフロディテの解剖学」における「切断・解体から再創造」の制作過程に倣い、新たな“作品”として再創造を図る、瀬川裕美子の試みは先鋭的かつ刺激的だ。断片であるモーツァルトの幻想曲、舞曲形式を再構築したバッハのパルティータ、数の公理性で時間や空間を超越しようとしたクセナキス…。これらに新たな秩序が与えられると、ステージの”核”として置かれながら、あえて未収録としたブーレーズ「ソナタ第2、3番」の「中心かつ不在」の意味が浮き彫りに。“録音を出す意義”へ一石を投じる。(寺西 肇)日本を代表するカプースチンのスペシャリスト、川上昌裕によるピアノ作品全曲録音の第3弾である。今回はピアノ協奏曲と室内楽(全曲世界初録音)というプログラムであり、非常に歴史的価値の高い内容だ。もちろん、重要なのは曲目だけではない。川上はカプースチンの音楽に求められる躍動感あふれるリズム、次々に変化する楽想に対応し、多様なニュアンスを聞かせる音色を兼ね備えており、彼自身の技量も存分に見せつけることに成功している。それにしても、ビッグ・バンドを聴いているような「ピアノ協奏曲第5番」は今後、演奏機会が増えていくのではないか。非常に魅力的な作品である。(長井進之介)ウィーンで育ったヴァイオリニストのヴォルフガング・ダヴィッドと、ピアニスト梯剛之による、5年にわたるライヴでのアンコール曲のみを集めたアルバム。拍手はすべてカットされているものの、演奏にはライヴの興趣があふれている。彼らは幼少期にウィーン国立音大準備科で学んだ共通点があり、そのルーツからか独特の自然な呼吸感が共有されている。硬めの音色と演奏スタイルをもつダヴィッドは、クライスラーではやや辛口の洒脱な魅力を引き出して面白いし、ロシアやスラヴものでは思い切った表現や歌いまわしを使って、アンコールらしい技巧と“遊び”を見せるのもいい。(林 昌英)CD

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