eぶらあぼ 2019.11月号
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178CDCDCD林望&野平一郎:演劇的組歌曲『悲歌集』マデルナ:甘い夢~20世紀のフルート音楽/カール=ハインツ・シュッツセレンディピティ ピアノ連弾作品集/大森ひろみ&佐藤祐介ランディーニ:わが愛しの女ひとよ~バッラータの世界~/アントネッロ林望(原作/作詩)&野平一郎(作曲):演劇的組歌曲『悲歌集』第1曲~第7曲林美智子(メゾソプラノ) 望月哲也(テノール) 福田進一(ギター) 佐久間由美子(フルート/アルト・フルート)マデルナ:甘い夢/ベリオ:セクエンツァ Ⅰ/福島和夫:伽陀迦盧那、冥/メシアン:黒つぐみ/武満徹:声(ヴォイス)、雨の呪文カール=ハインツ・シュッツ(フルート)ブルーノ・カニーノ 高橋アキ(以上ピアノ) 四戸世紀(クラリネット) 篠﨑史子(ハープ) 山口恭範(ヴァイブラフォン)クルターク:「ヤーテーコック 第8集」より〈花、人のように…〉/ローゼンブラット:2つのロシア民謡によるコンチェルティーノ/コリリアーノ:ガゼボ舞曲集/J.S.バッハ(クルターク編):われらまさにキリストを讃うべし、深き苦しみの淵よりわれ汝に呼ばわる、「神の時こそ、いと良き時」より〈ソナティーナ〉/ベネット:カプリッチョ 他大森ひろみ、佐藤祐介(ピアノ)ランディーニ:わが愛しの女よ、麗しき美しさに、私の悲しい眼よ、希望を追うために、眼には大粒の涙、想いに耽って/作曲者不詳:イスタンピッタ「喜びの始まり」 他アントネッロ【鈴木美登里(ソプラノ) 石川かおり(フィーデル) 西山まりえ(オルガネット/ハープ/ソプラノ) 星野麗(レベック) 武久源造(オルガネット) 永田平八(中世リュート) 濱田芳通(コルネット/リコーダー/スライド・トランペット)】ナミ・レコードWWCC-7907 ¥2000+税収録:2017年8月、草津音楽の森国際コンサートホール(ライヴ) 他カメラータ・トウキョウCMCD-28366 ¥2800+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9022 ¥2800+税マイスター・ミュージックMH-4066 ¥3000+税2006年2月に津田ホールにて初演され、「演劇的組歌曲」との副題が添えられた『悲歌集』(林望・原作/作詩、野平一郎・作曲)の初録音。ギターとフルートという切り詰められた伴奏は、抑制された中にも特殊奏法による音色の追求や詩の意味内容を的確にフォローする雄弁さに富み、そしてメゾソプラノとテノールによって展開される「もう失われた恋」への追想歌は極めてドラマティック。それゆえの「演劇的」ということだろうが、そこは野平の作曲、緻密な音楽構成の妙も光る。平明さと俗に堕ちない格調を併せ持つ現代の傑作と呼びうる「恋歌」であろう。初演者4名による演奏は言うまでもなく十全。(藤原 聡)ウィーン・フィルの首席奏者による“現代音楽”のフルート作品集。1951〜82年に書かれた20世紀の代表作が7曲、しかも無伴奏3曲、ピアノとのデュオ3曲、アンサンブル1曲という構成は、アンソロジー的な妙味十分だし、カニーノはじめ名手揃いの共演陣も特筆される。シュッツはこうした曲でも、持ち前の温かな美音を駆使して、表情豊かな演奏を聴かせる。それでいてシャープな空気感が横溢しているので、聴く側も集中力を絶やさずに楽しめる。中でもメシアンの「黒つぐみ」や武満徹の「雨の呪文」が、日本人演奏家の秀演と相まって鮮烈な聴きもの。   (柴田克彦)16歳で渡米して研鑽を積み、若くしてデビューを果たし帰国後も多方面で活躍をみせる大森ひろみと、14歳より本格的なレッスンを始めた型破りで、多種多様な音楽を境界線なく扱う感性で人気を集める佐藤祐介。師弟関係にあるピアニスト2人が4手連弾の名曲を鮮烈に紡いだ一枚。ハンガリーのクルタークが1973年から書き重ねている小品を始曲と終曲に据え、彼の編曲によるバッハの静謐なコラール3曲を核にして、ロシアのローゼンブラットや米国のコリリアーノ、英国のベネットらの現代曲を散りばめつつ、古典や民族音楽からジャズへと続く流れさえも語っている。 (東端哲也)溢れ出る創意によって、古の音楽に新たな生命を与える精鋭集団「アントネッロ」。彼らが、14世紀イタリアを代表する詩人で音楽家でもある、フランチェスコ・ランディーニのバッラータを中心に取り上げた録音(1998年)の高音質リマスター盤。「バッラータ」とは本来、厳格な拍や脚韻に基づく詩の形式の一種で、これに作曲されたものも同名で呼ばれる。時に清冽、時に悲愴、時に艶めかしい鈴木美登里の歌声。濱田芳通はじめ、管弦の名手たちがしなやかに操る、変幻自在な音色。そして、武久源造が紡ぐ、オルガネットの素朴な味わい。リアルな手触りで、聴く者を600年前の街角へ誘う。(笹田和人)CD

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