eぶらあぼ 2019.11月号
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176CDCDCDCDブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン間宮芳生:オペラ《ニホンザル・スキトオリメ》/野平一郎&オーケストラ・ニッポニカショパン&シューマン/高田泰治大石哲史・萩京子をうたう…12才~88才…うたかたのジャズブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番~第3番/クララ・シューマン:アンダンテ・モルト(3つのロマンスより)アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)セドリック・ティベルギアン(ピアノ)間宮芳生:オペラ《ニホンザル・スキトオリメ》全曲野平一郎(指揮) 大槻孝志(テノール)北川辰彦 山下浩司(以上バス・バリトン) 田崎尚美(ソプラノ) 原田圭(バリトン) 根本泰彦(俳優) ヴォーカルコンソート東京 コール・ジューン(以上合唱) オーケストラ・ニッポニカ ショパン:ピアノ協奏曲 第1番シューマン:ピアノ協奏曲高田泰治(フォルテピアノ)延原武春(指揮)テレマン室内オーケストラ萩京子:鳥、飛行機よ、一つぶよ、ゆめ売り、木のグリーンによせる朝の挨拶、すももの歌、まなこをひらけば四月の風が、ほんとうにすきなもの、あくび、馬、枯れたオレンジの木のシャンソン、花火が終わると、手、しぬまえにおじいさんのいったこと、フェステの歌 他大石哲史(うた/ピアニカ/リコーダー)服部真理子(ピアノ)橋爪恵一(クラリネット)Hyperion/東京エムプラスPCDA68200 ¥2857+税収録:2019年1月、すみだトリフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00676(2枚組) ¥3500+税収録:2018年8月、大阪市中央公会堂中集会室(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7906 ¥2500+税コジマ録音ALCD-7244 ¥2800+税モーツァルトなどの秀逸な録音で評価を高めている黄金デュオの最新盤。ナチュラルで誠実かつ詩情豊かなイブラギモヴァの魅力がフルに発揮された、素晴らしいアルバムだ。ブラームスのソナタ第1番の冒頭から繊細で慈しむような音楽が続き、精妙なニュアンスに溢れた演奏にただただ聴き惚れる。局部はこまやかに変化しながら、全体の造型は堅牢で音楽の流れはごく自然。ティベルギアンの雄弁なピアノも絶妙に貢献し、2番、3番と進むにつれて二人の交歓の妙がより際立っていく。最後に置かれたクララ・シューマンの小品もアイディアを含めてチャーミングだ。強くお薦めの1枚。(柴田克彦)間宮芳生はシリアスな現代ものだけでなく、合唱・吹奏楽・劇伴などにも実に魅力的な音楽を書いている。それらに心を動かされた人は、半世紀以上前の歌劇《ニホンザル・スキトオリメ》にも、ぜひ歩みを進めてほしい。自らの美を絵に永遠にとどめようとした女王ザル、見たままを描いてしまう画かきザル(スキトオリメ)、偶像を信じて戦争に突入する民衆ザル…木島始の寓話に触発された若き間宮の想像力は、ルネッサンスやバロック、後期ロマン派、モダニズムといった過去の語法を旺盛に消化しながら、独自の世界へと昇華させている。日本オペラにおける重要作。蘇演に尽力した人々の健闘も讃えたい。(江藤光紀)ドイツと関西を拠点とする高田泰治が、ピリオド楽器による演奏活動を続けるテレマン室内オーケストラ、同楽団の創設者、延原武春の指揮とともに、ロマン派の大作曲家の協奏曲を録音した意欲的なアルバム。ショパンでは作曲家が愛したエラール(1856年パリ)のオリジナル楽器を使用。滑らかなレガートの表現が香り高い音で奏される。一方のシューマンではイルムラー(1848年ライプツィヒ)の表情豊かな音を巧みに操り、フォルテピアノならではの深みのある音を聴かせる。各楽器の特色が際立って興味深い。聴くほどに、作曲家が耳にした音に思いを馳せる楽しみが広がる。(高坂はる香)オペラシアターこんにゃく座の大石哲史が、喉の手術から復帰して新録音した同劇団音楽監督・萩京子のソング集。寺山修司からまど・みちお、ブレヒト、ロルカ、シェイクスピアの訳詩まで、各テキストが語る年齢を想定して12〜88歳まで順に綴る。合唱曲からコンサートピース、劇中歌と曲想も様々だが、まるで朗読を聴いているかのように言葉が心に届く。儚くも美しい金子みすゞ〈ゆめ売り〉、37歳で病に倒れた宮澤賢治〈まなこをひらけば四月の風が〉、究極のラヴソングでもある谷川俊太郎〈しぬまえにおじいさんのいったこと〉などは思わず涙がこぼれ落ちる。 (東端哲也)

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