eぶらあぼ 2019.11月号
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174CDCDショスタコーヴィチ:交響曲第5番/ノット&東響ファゴットとコントラファゴットの快楽/岡崎耕治&山田知史シューベルト:即興曲集 作品90&作品142/中井正子古沢淑子ふたたび―フランス近代歌曲集―/古沢淑子&井上二葉ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団ブレーメル:アレグレット・オブスティナート、ディープ・バーガンディ/モーツァルト:12の二重奏曲 K.487/エルトマン:対話/オッフェンバック:二重奏曲集 第1番 ト長調 op.50/ヒンデミット:4つの小品/クニェジェク:二重奏曲 第1番・第2番/モンターノ:組曲 他岡崎耕治(ファゴット)山田知史(コントラファゴット)シューベルト:4つの即興曲 op.90、同 op.142中井正子(ピアノ)ドビュッシー:星の夜、美しい夕暮/ラヴェル:孔雀/サティ:青銅の像/カプレ:烏と狐、蝉と蟻/ベイツ:ミラボー橋/オーリック:僕はおまえにそう云った/カナル:大いなる黒き眠りは/プーランク:歌曲集「動物小話集」全曲、同「よしなし草」全曲/アーン:ささげもの 他古沢淑子(ソプラノ)井上二葉(ピアノ)収録:2019年5月、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00702 ¥3200+税マイスター・ミュージックMM-4065 ¥3000+税コジマ録音ALCD-7241 ¥2800+税収録:1961年4月、古沢淑子スタジオ(ライヴ) 他ナミ・レコードWWCC-7905 ¥2500+税5月の東京交響楽団定期演奏会の名演が早くもCDに。ジョナサン・ノットによるショスタコーヴィチの交響曲第5番は、思いのほか大きな構えながら、明瞭な金管の響きをはじめ、クリアで研ぎ澄まされたサウンドは健在。その上でノットはあえて予定調和にならない棒で東響をドライヴし、緊張感と熱気を存分に引き出す。特に第3楽章の張りつめた美しさと、終楽章の激しい追い込みが生み出す爆発力はトップクラスの表現。スターリン体制下で書かれた本作にまつわる問題意識と、それをも超えるような楽曲としての魅力、いずれも見事に伝える演奏で、ライヴの興奮がよみがえる。(林 昌英)岡崎耕治と山田知史のファゴットとコントラファゴットによるデュオCD第2弾。地味な音の同族楽器同士だが、いざ聴いてみるとこの2つの楽器が同族楽器ゆえの親密かつ絶妙なコントラストを形成しており、ファゴット特有の温かく心地良い音色も相まってずっとこの世界に浸っていたいと思わされる。全曲が卓抜だが、中でも元々ホルンのデュオとして書かれたとされる曲ゆえ、そのファゴット・デュオ版も全く違和感のないモーツァルトの二重奏曲 K.487、そして機知に富み、ファゴットの持ち味を十全に活かし切っているダミアン・モンターノの手になる「組曲」が秀逸。 (藤原 聡)ドビュッシーにラヴェル、ショパン、そしてバッハといった作曲家の作品を得意とする中井正子。彼女が今回挑んだのは、シューベルトの全ピアノ曲の中で最高傑作といっても過言ではない「即興曲集」。洗練された技巧、“ピアノを歌わせる”ことのできる、美しく変化に富んだ音色といった繊細なピアニズムが求められる作品群であり、ちょっとしたほころびが作品の“美”を壊してしまう危険を孕んでいる。しかしそこはさすがの中井。終始優雅な雰囲気を湛えた演奏を展開する。特にop.90-3や142-2といった旋律性豊かな作品でその美質を最大限に発揮。息の長い旋律が丁寧に紡がれている。(長井進之介)現役の彼女を知るのはざっと還暦以上の世代。でもフランス歌曲の第一人者として、多くのファンがその名前を知っているはず。1937年日本人声楽家として初めてパリ国立音楽院入学。戦後フランス楽壇の、大袈裟でなく第一線で活躍。52年に帰国後はフランス歌曲の普及に奔走した。《ペレアスとメリザンド》もプーランク《人間の声》も日本初演はこの人。当盤は、61年から70年までの貴重なプライベート録音。美しい佇まいの、凛とした清潔な声。収められた歌詞の朗読を聴けば発音・発語の美しさも亮然。50年以上も前にこのレベルで歌う日本人歌手がいたことに改めて驚き、誇らしく思う一枚。(宮本 明)SACDCD

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