eぶらあぼ 2019.11月号
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168 歌手は、日本オペラ協会だけでなく、他団体やフリーランスからも広くオーディションで選ばれたダブルキャストの総勢32名。主役の阿古夜/紅天女を歌うのは、藤原歌劇団所属で今最も輝いているソプラノのひとり、小林沙羅と、劇団四季出身でミュージカルで活躍する笠松はる。まるで原作のマヤと亜弓さながらに競い合い、またお互いを高め合いながら《紅天女》の世界を創り上げていくことを誓い合っているようだ。 制作記者発表会では、本番も幕開けに演奏されるという石笛を横澤和也が披露。その後、一真役のテノール山本康寛がソロのアリアを、また笠松ともう一人の一真役の海道弘昭がデュエットを歌った。親しみやすいメロディを持ちながら格調高い音楽が《紅天女》の世界を生き生きと描きだす。園田隆一郎指揮の東京フィルハーモニー交響楽団がどのような表現を展開するのかもとても楽しみだ。取材・文:室田尚子日本オペラ協会 スーパーオペラ 歌劇《紅天女》新作初演2020.1/11(土)〜1/15(水)各日14:00 Bunkamura オーチャードホール日本オペラ振興会https://www.jof.or.jp/■グランドオペラ共同制作《カルメン》 記者懇談会 神奈川県民ホール、愛知県芸術劇場、札幌文化芸術劇場 hitaruで上演される、グランドオペラ共同制作《カルメン》の記者懇談会が、9月27日、東京都内で開催された。 今回、《カルメン》のフル上演を初めて演出する田尾下哲は、19世紀に誕生したこの作品が今日的な視点から見てはらむ問題点をあぶり出した上で、物語を20世紀のアメリカのショービジネスの世界に置き換■日本オペラ協会 スーパーオペラ 《紅天女》制作記者発表会 『ガラスの仮面』といえば、漫画ファンならまず知らない人はいないであろう大ヒット少女マンガ。1976年に連載スタート、これまでに単行本49巻、累計発行部数は5000万部を超え、いまだ完結には至っていない。北島マヤと姫川亜弓というふたりの演劇少女が、幻の名作『紅天女』の主役をめざして互いに競い合う物語だが、このたび、日本オペラ協会がこの劇中劇である『紅天女』を「スーパーオペラ」として上演することを発表した。原作者の美内すずえ自らが脚本・監修を手がけるほか、作曲は映画『半落ち』で日本アカデミー賞優秀音楽賞に輝いた寺嶋民哉。また、2006年に新作能『紅天女』を初演した能楽師・梅若実玄祥が特別演出振付として参加する。 日本オペラ協会総監督の郡愛子は、今回のスーパーオペラ《紅天女》について、「大ヒット少女マンガとオペラとのコラボレーションを、グランド・オペラのスタイルで行うといういまだかつてない試み。新しいオペラの誕生を目指す」と意欲をみせる。「わかりやすく、美しく、感動的な、題名を聞いただけで皆さんがワクワクして足を運びたくなるようなオペラを作りたい」という郡の思いが、格好の題材を得た形だ。 郡とは20年以上の親交があるという原作者の美内も、オペラ化への並々ならぬ熱意を語る。 「単行本の40巻で『紅天女』の内容はかなり詳しく描いたんですが、実はラストは描きませんでした。でも今回は、全部書いちゃいました(笑)。マンガより前に『紅天女』の物語をお見せすることになります。これまでに色々なオペラを観ましたが、日本のオペラ歌手の皆さんは本当に素晴らしい。《紅天女》が、歌手の皆さんがもっともっと活躍の場を広げるきっかけになれればいいと思っています」左より:田尾下 哲、加藤のぞみ、城 宏憲 写真提供:神奈川県民ホール左:美内すずえ 右:小林沙羅 写真提供:日本オペラ振興会

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