eぶらあぼ 2019.10月号
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90スティーヴン・オズボーン ピアノ・リサイタル英国最高の知性派ピアニストがベートーヴェン後期の深淵に挑む文:長井進之介11/1(金)19:00 トッパンホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp/ スコットランド生まれのピアニストであるスティーヴン・オズボーンは、クララ・ハスキル国際コンクール、ナウムブルク国際コンクールで優勝し、その名を世界に知らしめた。現在ではベルリン・ドイツ響やミュンヘン・フィル、ウィーン響など、世界の名だたるオーケストラと共演を重ねると同時に、コンセプト性の強いリサイタルで世界中から注目を集めている。来日も多く、2017年に行ったメシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」の全曲演奏は非常に大きな話題となった。 幅広いレパートリーを誇る彼が今回の来日で演奏するのは、ベートーヴェンの後期3大ソナタ。ベートーヴェンが生涯取り組み続けた作品ジャンルであるピアノ・ソナタの最後を飾る3曲であり、演奏にはピアニストとしてのあらゆる資質が求められる。研ぎ澄まされた技巧はもちろん、ロマン派にも通ずる感情豊かな表現と、緻密な構成による作品を見通す構築力の高さだ。ピアニストにとって非常に高い壁となって立ちはだかる曲だが、オズボーンはこの3曲の演奏に必要なすべてを兼ね備えたピアニストである。それが今回のリサイタルによって改めて示されることだろう。今年ディスクをリリースしたばかりということもあり、彼が一番熱く取り組んでいる作品をどう聞かせてくれるか、期待が高まる。イギリスはもちろん、ヨーロッパでも最も注目を集めるピアニストの一人である彼が紡ぎ出すベートーヴェンの世界をぜひこの機会に味わってほしい。©Ben Ealovegaめぐろパーシモンホール フレッシュ名曲コンサート若手の才能が煌めく2つの協奏曲と大編成の管弦楽を堪能文:林 昌英11/9(土)15:00 めぐろパーシモンホール問 めぐろパーシモンホールチケットセンター03-5701-2904https://www.persimmon.or.jp/ 期待の若手をソリストに迎える、めぐろパーシモンホールの「フレッシュ名曲コンサート」。11月の公演は、近年の日本音楽コンクール(以下「日本音コン」)を制したヴァイオリンとピアノの俊才が並び、ひときわ注目を集めている。 ヴァイオリンは、2017年東京音楽コンクール、18年日本音コンと、国内最高峰の場で2年連続第1位を獲得した荒井里桜。演目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で、荒井にとっては17年の優勝時にプロオーケストラと初共演した曲で、思い入れが深い。 ピアノは、17年に高校2年生で日本音コンを制した吉見友貴。劇的な優勝を飾った本選のプロコフィエフはじめ、これまではロシアものの演奏機会が多かったが、今回はラヴェルの協奏曲を選択。自らを“ラヴェル弾き”と語るほど愛する作曲家であり、熱望叶っての演目となる。 日本音コンの選考の模様や演奏者の素顔に迫るテレビ番組でも、17年はピアノ、18年はヴァイオリン部門がフィーチャーされていたため、吉見と荒井の活躍を記憶している方も多いだろう。今回は彼らの清新な名技、溌溂とした表現、そしてコンクールからの進化など、見どころの多いステージとなる。 オーケストラは飯森範親指揮の東京交響楽団。充実の好演を連続している両者が、俊英たちのトップパフォーマンスを引き出してくれるはず。さらに、演奏会のメインとなるR.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」では、壮麗なオーケストラサウンドも堪能させる。吉見友貴 ©Kei Uesugi荒井里桜飯森範親 ©山岸 伸

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