89Photo:Teatro Regio di Parmaステファン・ポップ & 仲間たち オペラ・ガラ・コンサート・ジャパン・ツアー201910/28(月)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール10/31(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール11/6(水)15:00 横浜みなとみらいホール総合問 サルバベルカント オフィス080-1321-4130 https://salvabelcanto.site/※オーケストラは各日で異なります。共演歌手などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ステファン・ポップ(テノール)イタリアの主要歌劇場が奪い合う売れっ子テノールの十八番をいいとこ取り取材・文:香原斗志Interview 最近、イタリアの歌劇場が最も頼りにしているテノールで確実に三指に入るであろう、ルーマニア生まれのステファン・ポップ。ストレスなく湧き上がる豊かな声と、簡潔で流麗なフレージングで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。すでに日本でも2017年に《ノルマ》でマリエッラ・デヴィーアを相手に、力強く品位あるポッリオーネを聴かせてくれたが、イタリアの歌劇場での主要公演も、私はポップに裏切られたことがない。そのポップがイタリア・オペラのナンバーによるツアーを行う。 かつてパヴァロッティの声は、神が声帯に口づけした賜物だといわれたが、パヴァロッティに憧れるポップの才能も、選ばれしものだった。 「6歳か7歳のとき、小学校に音楽学校の先生が教えにきて、僕の両親に『息子さんは才能がある』と伝えたんです。それからピアノとヴァイオリンを勉強しましたが、10代後半で受けた1時間の歌のレッスンで、『君はオペラを勉強すべきだよ。次世代のパヴァロッティになれるから』と勧誘されて」 こうして母国の北西部、クルジュ=ナポカの音楽学校に入学し、すぐに頭角を現した。 「2年後に《愛の妙薬》でデビューし、その後ローマ歌劇場のゼッフィレッリ演出《椿姫》で国際デビューし、大成功。2010年にはソウル国際音楽コンクールで優勝し、プラシド・ドミンゴ主催のコンクール(オペラリア)では聴衆賞ももらいました」 たちまち主要劇場からオファーが殺到したが、野球のピッチャーの肩同様、売れっ子歌手も使い減りする。その点、ポップは賢かった。 「師匠のバス歌手から、昔はMETに船で行き、1回歌うと2、3日は休んだ、という話を聞いて、考え方が大きく変わりました。一時はイタリアのほかロンドン、パリ、モスクワと旅に次ぐ旅でしたが、余裕を持つべきだと。それで、北イタリアのパルマに家を買って引っ越し、勉強の時間も十分に確保するようにしたのです」 加えて、音楽への向き合い方も真摯だ。 「指揮者のネッロ・サンティに『一音一音がテンポを作るのだ』と言われ、作曲家が楽譜に込めた意図を忠実に再現するために、そのことを強く意識しています。また、《トスカ》とか《ドン・カルロ》とか、もう少し声の成長を待ったほうがいい役は断っています」 こうして声が維持され、音楽性は高まり、ますます売れっ子になっている、というのがポップを巡る現実だ。本場の歌劇場が求める旬の声、特別な才能に恵まれた歌手が磨き上げた表現。その十八番ばかりを「いいとこ取り」して日本で味わえる、しかもオーケストラとの共演(指揮はクリスティアン・サンドゥ)。豊かで幸福なチャンスである。作曲家の秘密 第3回 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 菊池洋子(ピアノ)平日の昼間に格別のモーツァルト体験を文:飯田有抄 かつしかシンフォニーヒルズのコンサートシリーズ「作曲家の秘密 シーズンI」。第1回のバッハ、第2回ラヴェルに続き、第3回はモーツァルトが特集される。登場するのは、2002年第8回モーツァルト国際コンクールにて日本人初の優勝者として輝いて以来、精力的な活動を続けるピアニスト、菊池洋子。多彩な音色で幅広いレパートリーを有し、室内楽や協奏曲の経験も積む菊池のピアノの響きは、知性のきらめきを感じさせる。曲想の変化を精彩に表現する力に満ちており、モーツァルト11/20(水)13:30 かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール問 かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233 https://www.k-mil.gr.jp/©Yuji Horiの独奏曲の魅力をみずみずしく伝えてくれる。今回取り上げるのは、最も有名なハ長調のソナタ K.545、「きらきら星変奏曲 K.265」といった、ピアノ学習者の間でもよく弾かれる作品。菊池のピアノが作品の輝きをいかに伝えてくれるか楽しみだ。ワンセットで演奏されることも多いハ短調の幻想曲 K.475とソナタ K.457では、モーツァルトの美しい悲哀も聴かせてくれることだろう。
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