eぶらあぼ 2019.10月号
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88黒川 侑・佐藤晴真・阪田知樹 ピアノトリオ勢いのある若手たちが濃密に描き出す傑作3篇文:伊熊よし子10/19(土)14:00 京都府立府民ホール“アルティ”問 京都府立府民ホール“アルティ” 075-441-1414 http://www.alti.org/ ピアノ・トリオはヴァイオリニスト、チェリスト、ピアニストの音楽性および人間性がピタリと合わないと聴きごたえのあるトリオが生まれない難しいジャンルである。ただし、作曲家が魂を込めて作り出した作品が多く、その作品群は音楽家の心をとらえてやまない。そんなトリオを演奏したいと熱望した京都出身のヴァイオリニスト黒川侑が、チェリストの佐藤晴真、ピアニストの阪田知樹に声をかけ、今回のためにトリオを結成した。 黒川は16歳で日本音楽コンクール第1位を獲得、現在はエコール・ノルマル音楽院で研鑽を積みながら国内外のオーケストラと共演を重ねている。佐藤はルトスワフスキ国際チェロ・コンクール、日本音楽コンクールで第1位に輝き、ワルシャワの音楽祭などでも活躍。阪田はフランツ・リスト国際ピアノ・コンクールの覇者。現在はハノーファー音楽演劇大学でさらに音楽に磨きをかけている。3人とも若芽がぐんぐん空に向かって伸びていくような勢いを感じさせ、国際舞台で演奏を展開している若き逸材である。 プログラムはラフマニノフの「悲しみの三重奏曲」第2番、シューベルトのピアノ三重奏曲「ノットゥルノ」、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」。ラフマニノフはチャイコフスキーの死を悼んで書かれた甘美で荘重な曲。シューベルトは歌謡性に富んだ美しい作品。ベートーヴェンはこのジャンルの代表作で名人芸が存分に楽しめる。左より:黒川 侑/佐藤晴真 ©FUKAYA Yoshinobu/auraY2/阪田知樹 ©HIDEKI NAMAIエクス・ノーヴォ室内合唱団演奏会 vol.12ガブリエーリとシュッツ ~神聖なる響きの大伽藍~ルネサンスからバロックへ―時代の過渡期を彩った壮麗なアンサンブル文:宮本 明11/11(月)19:00 東京文化会館(小)問 ムジカキアラ03-6431-8186 http://exnovochamberchoir.com/ テノール歌手で指揮者の福島康晴率いるエクス・ノーヴォ室内合唱団は、ルネサンス、バロックのイタリア宗教曲を中心に演奏するグループ。次の公演「ガブリエーリとシュッツ~神聖なる響きの大伽藍~」では、16世紀後半ヴェネツィアで「分割合唱(複合唱)」を用いて革新的な立体サウンドを築き上げたジョヴァンニ・ガブリエーリと、晩年の彼に師事し、イタリアの潮流をドイツに持ち帰ったハインリヒ・シュッツにフォーカスする。 注目は、17声や14声といった多声部で書かれたガブリエーリの作品。しかし発表されている合唱メンバーは9人だ。どうやって? 声楽だけで歌われるイメージが強いかもしれないルネサンスの合唱曲だが、じつは器楽と声楽を区別しない、あるいは任意に選択できるように書かれている場合が少なくない。今回も、「歌」と指定されているパート以外を器楽に割り振った。「コルネットやサクバット(トロンボーン)の輝かしい響きと歌声が混ざり合い、大きなスケールを生み出せる」と指揮者の福島。このあたり、「器楽も含めてのアンサンブル」というスタンスが彼らの指針でもあるようだ。 合唱メンバーにはソロでも活躍中の名前がずらり。今回はアルト・パートを女声やカウンターテナーでなく男声のテノールが歌うことで、テンションの高い充実した響きを狙う。 「始めから作り直す」という信条を込めたラテン語の「EX NOVO」にふさわしい、新しい視点、古楽アンサンブルの最前線に浸りたい。過去の公演より福島康晴 ©Izumi Saito

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