eぶらあぼ 2019.10月号
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83©Akira Mutoデビュー50周年コンサート・シリーズ Vol.3 ―傑作三大ソナタを一堂に―寺田悦子 × ショパン 響き合うソナタ10/20(日)15:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/寺田悦子(ピアノ)デビュー50周年に挑むショパンのソナタ3曲取材・文:萩谷由喜子Interview チラシを見て驚いた。ショパンの大作ソナタが3曲並んでいる。第2番「葬送」と第3番ロ短調、そしてもう1曲は、何とチェロ・ソナタである。毎回卓抜なプログラミングで聴き手を惹きつける寺田悦子が、デビュー50周年にひときわ意欲的なプログラムを披露する。 「チェロ・ソナタはずっと弾きたいと思っていました。とても良い曲で、ラフマニノフもチェロ・ソナタを書くとき、これを参考にしたと思います。ト短調で始まってト長調で終わるところなどショパンをモデルにしたんでしょうね。難しいですから覚悟が必要ですが、新鮮な気分で臨みたくて決めました。チェロの伊藤悠貴さんとは初顔合わせ。でも、例えば版の選択にしても、ペータース版で意見が一致。先日、ざっと合わせてみましたら、いい感じです。お若いからとてもエネルギッシュで情熱的ですね。これから細かいところを詰めていくのが楽しみです」 2曲のピアノ・ソナタはどちらもレパートリーに入っている。 「最初に勉強したのは3番でした。ウィーンでディーター・ウェーバーという先生についていたときにね。ウィーンには5年いたのですが、3年目に日本でデビュー・リサイタルを開きました。そこから数えて今年が50周年になるわけなんですけれど、そのデビュー・リサイタルもオール・ショパン。ノクターン第17番作品62-1、プレリュード作品28全曲、エチュード作品10から8、10、4、12、1の5曲。それにソナタ3番でした」 何とヘビーな選曲。リサイタルが2回できそうだ。 「そうですね。でも、先生がこれでやってごらん、と決めてくださいました。大変でしたが、最初に山を乗り越えたので、あとが楽でした。先生のおかげです。葬送ソナタを勉強したのは日本に帰ってきてからで、当時は3番のほうが好きでしたが、今ではそれぞれの良さを感じます。3番が均整のとれた名作であるのに対して、葬送は斬新で前衛的でさえありますし、尊敬していた歌手の死を悼む気持ちも込められていて、とても奥の深い作品です」 最後に、これら3曲のどこがショパンらしいのか、ピアニストとして何を聴き手に伝えたいのか語ってもらった。 「ソナタという枠の中で、ショパンは自分のやりたいことを最大限に表現しました。その彼の天才性、独創性を伝えることは私にとっても大きなチャレンジです。ぜひ3つのソナタを聴きにいらしてください」 ショパンの傑作ソナタ3曲を一度に聴ける。これは、またとない機会だ。オーケストラ・プロジェクト2019「管弦楽大革命」ベテランと若手が21世紀の管弦楽のあり方を問う文:江藤光紀 オーケストラ・プロジェクトは1979年の第1回以来、作曲家のイニシアティヴによる新作発表の場として注目を浴びてきた。今回はベルリオーズ没後150年を記念して「管弦楽大革命」というコンセプトを打ち出したが、そこにはオーケストラという19世紀のメディアの、今日的な可能性を探るという問題意識がある。中堅~ベテランを中心に自由に作品を持ち寄るスタイルが、大きな転機を迎えそうだ。 出品作曲家にも新傾向。小鍛冶邦隆、鈴木純明という藝大作曲科の二人の大黒柱に、フランス国立音響音楽研究所IRCAMでコンピュータ音楽を学んだ二人の若手が加わった。折笠敏11/1(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 オーケストラ・プロジェクト2019 050-5217-5619/orchestra.project2019@gmail.comhttp://www.orch-proj.net/鈴木純明之は物理や美学を学んだ後、作曲に転じ、北爪裕道は本年度の芥川也寸志サントリー作曲賞にノミネートされるなど、着実に成果を上げている。 今回は編成も一風変わったものになろう。鈴木はサクソフォンの協奏曲で臨み(独奏:大石将紀)、北爪作品は自動演奏ピアノに打楽器ソロ(菅原淳)と管弦楽を対置している。若手の作品にはコンピュータも用いられるのではないか。管弦楽復興の新たな狼煙に刮目だ。小鍛冶邦隆 ©Ayane Shindo

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