eぶらあぼ 2019.10月号
76/229

73チャイコフスキー・フェスティヴァル2019 歌劇《スペードの女王》マリインスキー歌劇場の名歌手たちによる名作オペラへの想い文:岸 純信(オペラ研究家)11/30 (土)、12/1(日) 各日15:00 東京文化会館問 ジャパンアーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/tf2019/※チャイコフスキー・フェスティヴァル2019の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 内装の華麗さに「さすが帝都のオペラハウス」と唸ってしまうサンクトペテルブルクのマリインスキー歌劇場。ロシアの名だたる大作曲家が名作を発表したが、中で最も悲愴感を漂わせ、心に沁み入るオペラがチャイコフスキーの《スペードの女王》(1890)である。物語は、士官ゲルマンと貴族階級の娘リーザの抑えきれぬ恋に、カードの秘術を知る老伯爵夫人が巻き込まれ、リーザの婚約者エレツキー公爵がプライドをかけてゲルマンに勝負を挑むと、最後はカードに裏切られた士官が自殺するというもの。プーシキンの原作を広げた台本により、娘と士官がどちらも世を去ることで、ドラマの悲劇性が一層高まり、客席に深い余情をもたらすのである。 今秋の来日公演でゲルマンを演じるテノール、ミハイル・ヴェクア(11/30)は歌劇場の新進スター。明るく強い声音で人気の彼、「第1幕の雷雨の場で、ゲルマンは『僕は厳粛に誓う。リーザは僕のものになる!』と絶唱します。彼の情熱は雷鳴を超えて轟くのです」と熱く語る。一方、敵役でも紳士的な態度を崩さぬエレツキー公爵役はべテランのバリトン、ロマン・ブルデンコ(両日)。この役では何より、リーザに切々と愛を訴える第2幕の名曲が聴きものだが「あのアリアは声のテクニックがそれは難しいんです。でも、成功すれば本物のエメラルドのように輝きます!」とにこやかに伝えてきた。A.ステパニュクの壮麗かつ頭脳的な新演出と共に、彼らの美声を堪能してみたい。©N.RazinaMusic Program TOKYO プラチナ・シリーズ4 鈴木大介(ギター)渡辺香津美をゲストに迎え、邦人作曲家のギター作品による魅惑のステージ文:小室敬幸12/18(水)19:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp/ 48歳となった現在でもなお新しい学びに取り組み、自身ならびにギターの可能性を拡大し続けている鈴木大介こそ、真のフロントランナーと称されるべきであろう。自分の興味を深堀りしつつ、同時にギター界を見渡した上で何をすべきかを考えて行動し、ちゃんと実現まで漕ぎ着けられる貴重な存在なのだ。特に重要なのが邦人作曲家たちとの交流。キャリア初期に後押ししてくれた武満徹のギター曲をはじめ、数々の邦人作品の初録音もしくは初演に携わってきた。そうした初録音・初演作品だけを集めたのが、このリサイタルである。武満の実質的な遺作「森のなかで」、ギターの限界に挑むような超絶技巧を駆使する酒井健治作品、アウシュヴィッツ訪問の心象風景を描いた池辺晋一郎作品、ブラジル音楽から影響を受けた美しいハーモニーが心に残る伊左治直作品…と、鈴木が世界初演にかかわった作品のなかから、世代も個性も異なる作曲家による楽曲が選抜された。そして、ここに西村朗と渡辺香津美による新作初演が加わるというのだからテンコモリだ。また渡辺はゲストとしてギター演奏も行い、華麗なアドリブを堪能できる猿谷紀郎作品や、武満による映画音楽を鈴木とのデュオで披露。現代音楽の作曲家ばかりだが、今回演奏される作品はどれも分かりやすく、心に響く音楽ばかりなのでご安心を。日本発のギター音楽を振り返り、未来へと繋がっていくこの特別な公演を見逃すな!渡辺香津美 ©Yosuke Komatsu(ODD JOB)鈴木大介

元のページ  ../index.html#76

このブックを見る