eぶらあぼ 2019.10月号
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69CD『ファゴットとコントラファゴットの快楽』マイスター・ミュージックMM-4065¥3000+税9/25(水)発売岡崎耕治(ファゴット)& 山田知のりひと史(コントラファゴット)新鮮な魅力に溢れるユニークな低音楽器デュオ取材・文:宮本 明Interview 日本のファゴット界の第一人者・岡崎耕治と、その門下生でもある山田知史のコントラファゴットによるデュオのCDがリリースされた。昨年に続く二人の第2弾。 この2つの楽器の二重奏自体、聴いたことのある人はきっとかなり少ないと思うのだけれど、なんとなく、コントラファゴットの通奏低音的な下支えの上で歌うファゴット、という図式を想像しがちではないだろうか。しかし彼らのデュオはそれとはかなりちがう。ファゴットとコントラファゴットが丁々発止と渡り合う、一対一の二重奏なのだ。じつに新鮮。そして楽しい! 岡崎「山田君だからできるんです。コントラファゴットをこれだけ吹ける人はそんなにいない。かつてはオーケストラのセカンド奏者が受け持つ楽器でしたが、最近のヨーロッパのトップ・オーケストラには、ソロ・コントラファゴット奏者として契約している人もいます。そういう人に学んで、日本にも山田君のような優れた奏者が出てきたのです」 山田「日本の大学にはまだコントラファゴットの専門の先生はいないので、私も留学して初めて、特殊管への取り組みや、オーケストラでの役割の重要性を知りました。ハーモニーの重厚さを出せた時など、吹いていても鳥肌が立ちます」 岡崎「最初からこのCDを聴いて、ソロとして吹くコントラファゴットのイメージを持てる若い人はしあわせだと思いますね。うまくなって当たり前(笑)。その意味でも反響は大きいし、手前みそでなく、大きな意義があると思っています」 曲探しは山田の担当。収録曲の大半はこの2本の楽器のためのオリジナル作品だ。 山田「想像していたよりは曲がたくさんあるんです(笑)。この2本を合わせると、音域がかなり広く取れるので、どの曲をやっても響きが豊かになりますね」 岡崎「倍音の関係か、二人で吹くと自分の音がいつもより豊かに感じられて、表現の可能性が広がります。新しいイメージがどんどん湧いてくる。とくに彼のようなうまい人と一緒にやっているとね。別世界に連れて行ってもらえる。もはや師弟関係でもなんでもない。一人の素晴らしい演奏者です」 山田「光栄です。でも、一緒にやっていても、『じゃあこうしたらどう?』といろんな引き出しをお持ちなんです。自分はまだまだ全然足りない」 「二人のコンサートは?」と訊ねると、顔を見合わせて「大変だよね」と笑う。CD以上に、この2本だけの編成で聴き手を飽きさせない工夫が必要なのだというけれど、この独特のサウンドの面白さと緊張感ある二重奏は、ぜひ生でも体験してみたい。10/25(金)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227http://www.nikkei-hall.com/インゴルフ・トゥルバン ヴァイオリン・リサイタルコンマスからソリストに転身した凄腕プレイヤー登場!文:笹田和人 弱冠21歳にして名門ミュンヘン・フィルの第1コンサートマスターに就任し、音楽監督だった名匠セルジュ・チェリビダッケの薫陶を受けた、ヴァイオリンのインゴルフ・トゥルバン。現在はソリストとして活躍中の彼が、バロックと20世紀、2つの名ソナタを軸とした多彩な佳品を披露する。 1964年、ミュンヘン生まれ。幼い頃から楽才を発揮し、史上最年少でミュンヘン・フィルのコンマスに。チェリビダッケによる“黄金時代”の名演を支えた。88年に退団してからは、名ソリストとして国際的に活躍。デュトワやマゼール、メータら巨匠指揮者と共演を重ねてきた。 今回は、日独で活躍するピアノの名手、サヴァリッシュ朋子が共演。タルティーニ「悪魔のトリル」とリヒャルト・シュトラウスのソナタを対置して大枠に。ここへロッシーニ「パガニーニによせてひと言」、これに応えるようにパガニーニ「魔女たちの踊り」と2つの小品を配し、技巧的なサラサーテ「カルメン幻想曲」で締め括る。左:岡崎耕治 右:山田知史 ©Yasuhisa Yoneda

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