eぶらあぼ 2019.10月号
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66©Igor Cortadellas新日本フィルハーモニー交響楽団 第613回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉11/30(土)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp/ジョゼップ・ポンス(指揮)バイロンの旅とユーモラスな「カルメン」をぜひ生で!取材・文:柴田克彦Interview 11月の新日本フィル定期に登場するジョゼップ・ポンス。スペインの名匠たる彼は、スペイン国立管の芸術監督を9年間務めた後、バルセロナのリセウ大劇場の音楽監督として活躍し、パリ管、BBC響、ゲヴァントハウス管等にも客演を続けている。日本ではN響や東京フィルを指揮。国自体も含めて良き印象を抱いている。 「日本のオーケストラはプロフェッショナルだなと感じています。しっかりと準備されていて、演奏水準も高い。新日本フィルも素晴らしい楽団だと聞いていますので、指揮するのが楽しみです。それに私は、能や日本画、陶芸など、日本の文化にも深い関心を持っています」 ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」(ヴィオラ独奏は元首席奏者の井上典子)と、ビゼー(シチェドリン編)の「カルメン組曲」が並ぶ今回のプログラムは、実に興味深い。 「このプロは、共にフランスの作曲家がパリで活動しながら、ベルリオーズはイタリア、ビゼーはスペインを向いている点が面白いのではないかと思います。『イタリアのハロルド』は、様々な著名奏者が録音しているヴィオラの重要レパートリー。でも私は交響詩の要素を持った交響曲だと捉えています。バイロンの物語に沿って作曲された、旅をするような音楽。そこが妙味ですね」 シチェドリン編の「カルメン組曲」は、弦楽と4群の打楽器というユニークな編成。オーケストラ公演での生演奏は貴重な上に、マエストロの思い入れは相当強い。 「シチェドリンは、ロシアの素晴らしい作曲家で、偉大なバレエ・ダンサー、マイヤ・プリセツカヤの夫です。彼は、ビゼーの曲を使って新しいバレエ音楽を作ろうと試みました。おなじみの旋律が随所に登場しますが、使われている楽器が全く異なり、ヴィオラやヴァイオリンが歌手のようなソロを弾く場面もあれば、有名なメロディに突然強烈なアクセントが付けられたりもします。それに『アルルの女』の〈ファランドール〉が交じるなど、全体にユーモラスな曲。いわば髭が生えたモナ・リザの絵と同じような作品ですね。しかも映画音楽の要素があり、ロシアらしい重厚な音やショスタコーヴィチの音もします」 彼は同曲を再三演奏しているという。 「プリセツカヤがスペイン国立バレエの監督をしている時、マドリードに来たシチェドリン本人から紹介されました。数年後パリで初めて演奏したところ、えらく受けることがわかり、それ以来よく演奏するようになりました。パリ管やゲヴァントハウス管でもやりましたし、毎年必ず1、2回は指揮しています」 同曲で大切なのは「ユーモアと情熱をもって演奏すること」との由。熱のこもった彼の話を聞くと、本番への期待が大きく膨らむ。浜離宮ランチタイムコンサートvol.189 モーツァルト・シンガーズ・ジャパン少年モーツァルトの瑞々しいアリアを堪能文:東端哲也 189回目を迎える浜離宮朝日ホールの人気企画。10月にはモーツァルトの声楽作品をこよなく愛するオペラ歌手とピアニストによるグループ(2018年1月発足)から精鋭4人が登場。テーマはモーツァルトが10代で書いた作品。前半は最初期の舞台作品である宗教的ジングシュピール《第一戒律の責務》や3幕のラテン語詩劇で実質的にはオペラ・セリアの《アポロとヒュアキントゥス》、18歳で書き上げたオペラ《偽の女庭師》などからアリアを披露。後半は同メンバーで9月にレコーディングの予定もある、1幕もののオペラで初期の傑作と10/23(水)11:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/の呼び声も高い《バスティアンとバスティエンヌ》の抜粋。羊飼いの娘を鵜木絵里(ソプラノ)、その恋人のバスティアンを望月哲也(テノール)、いかさまの魔法使いで占い師のコラを宮本益光(バリトン)が演じる。ピアノ担当はチェンバリストとしても活躍中の山口佳代。宮本益光望月哲也 ©深谷義宣鵜木絵里 ©深谷義宣山口佳代このメンバーだから聴ける贅沢な時間を。軽快なトークも楽しみだ。

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