eぶらあぼ 2019.10月号
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6010/21(月)19:00 武蔵野市民文化会館(小)(0422-54-2011)、10/24(木)19:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(075-711-3231)、10/25(金)19:00 王子ホール(03-3567-9990) ※公演によりプログラムは異なります。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.tvumd.com/ヴィジョン弦楽四重奏団ジャンルの境界線を飛び越える新型クァルテット、日本来襲!取材・文:秋島百合子Interview 「ヴィジョン弦楽四重奏団を一言でいうと、『多様性(ダイヴァーシティ)』ということですか?」 7月に行われたシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭での公演の翌日、宿泊先のホテルでそう訊いたら、直接的な答えは返ってこなかった。 「いろいろなスタイルの音楽をやるのは、観客にできるだけ多くのオファーを出して境界線を引きたくないからです。それが我々の姿だから、ありのままを見てもらいたいのです」(ヤーコブ・エンケ、第1ヴァイオリン) クラシックを予期して来る観客に他のジャンルの音楽も聴かせるのはチャレンジしたいから? それとも啓蒙するため? 「我々が演奏するところはほとんどがクラシック音楽の環境だし、特に弦楽四重奏は伝統的な室内楽なので、後半のプログラムを聴くと観客は、弦楽奏者からは想像もできなかったサウンドだという反応をします。楽器を叩いたりマイクを使ってヒップホップをやるわけですから。でもこれがクラシックとポップスを繋ぐよいチャンスです。ショックを受ける人も興奮する人もいるし、途中で帰ってしまう人も少しいます(笑)」(ザンダー・シュトゥアート、ヴィオラ) 「多様性」などという堅苦しい言葉とは縁遠く、クラシックもポップスも自然に体の中から湧き出てくる感じだ。彼らについてよくいわれる立奏、暗譜のスタイルも、ポップスに慣れていたら当たり前のことだろう。気負いのない若者の“バンド・メンバー”だった。 そんな自由な雰囲気の彼らだが、実はジュネーヴ国際音楽コンクール、メンデルスゾーン全ドイツ音楽大学コンクール等の主要コンクールに優勝している実力派だ(2016年)。ハノーヴァー等からベルリンに出てきた4人はベルリン芸術大学で学び、12年にヴィジョン弦楽四重奏団を結成した。すでにライプツィヒ・ゲヴァントハウス、ベルリン・コンツェルトハウス、ハンブルクのエルプフィルハーモニーといった有名ホールに出演している。今年6月にはロンドンの名門ウィグモア・ホールにデビューした。初めてのCDにメンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第6番」とシューベルトの「死と乙女」を録音したばかりだ。 「クラシックは音楽とアーティストのみで観客は聴くだけだから、ちょっと悲しい。YouTubeやビデオ、映画のあるこの時代に、クラシックもいろいろなカラーの照明を使ったりして、それぞれの作品のムードの中に観客を連れて行きたいですね」(レオナルド・ディッセルホルスト、チェロ) 日本公演ではハイドンの弦楽四重奏曲op.77-1、バツェヴィチの第4番、シューベルト「死と乙女」などに加えて、ポップスやロックなども演奏するという。ホールで何が起きるのか楽しみにしていよう。久喜ゆかりの演奏家コンサート 伊藤 圭 クラリネット・リサイタル第一人者がソロと五重奏で楽器の魅力を余すところなく伝える文:長谷川京介 NHK交響楽団の首席クラリネット奏者で、久喜市在住の伊藤圭が、地元でリサイタルを開く。伊藤は東京藝術大学を卒業後、2004年、第6回日本クラリネットコンクール第1位。都響を経て、11年首席としてN響に入団。巨匠ブロムシュテットやヤルヴィの薫陶を受ける一方、メンバーとの室内楽を重ねるなど、今やN響を代表する奏者の一人として活躍している。 今回のリサイタルでは、モーツァルト「クラリネット五重奏曲」を、吉岡麻貴子(都響第1ヴァイオリン副首席)、大和10/20(日)14:00 久喜総合文化会館(小)問 久喜総合文化会館0480-21-1799 https://www.kuki-bunka.jp/加奈(都響ヴァイオリン)、萩谷金太郎(都響ヴィオラ)、門脇大樹(神奈川フィルチェロ首席)という気心の知れた仲間たちと共演。他に榊原紀保子(ピアノ)の伴奏で、シューマン「アダージョとアレグロ」、プーランク「クラリネット・ソナタ」なども披露する。ホームグラウンドでの公演は、温かな雰囲気に包まれることだろう。

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