eぶらあぼ 2019.10月号
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56ダン・タイ・ソン ピアノ・リサイタルリリシズム溢れるロマン派の名曲とパデレフスキの秘曲を文:高坂はる香10/16(水)19:00 紀尾井ホール問 ヒラサ・オフィス03-5727-8830 http://www.hirasaoffice06.com/他公演 10/5(土)大分/竹田 10/6(日)北九州、10/10(木)東京/武蔵野、10/13(日)福島、10/15(火)名古屋※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 ダン・タイ・ソンがショパン国際ピアノコンクールで優勝して、来年で40年となる。優勝以来幅広いレパートリーで音楽性を深め、同時に、ナショナル・エディションによるマズルカ全集の録音などにより、ショパンの解釈者としての評価を不動のものとした。そして今や、彼が育てた弟子たちが、新しい世代のショパンの解釈者としてショパンコンクールで結果を残している。 そんなダン・タイ・ソンが今回届けるのは、ショパンの作品を中心としたプログラム。冒頭は、シューベルトのピアノ・ソナタ第15番「レリーク」。近年初めてシューベルトの録音をリリースしており、作曲家との距離もより縮まっている中での演奏になるだろう。 ショパンからは、「舟歌」やバラード第1番のような人気曲に加えて、「マズルカ風ロンド」や「ボレロ」といった、演奏機会は多くないながらも、ショパンの若き日の祖国を思う気持ちが溢れ出すような名曲を演奏する。 加えて楽しみなのが、ポーランドの大ピアニスト、パデレフスキの作品。ショパンの楽譜校訂を手がけた「パデレフスキ版」でよく知られる人物だが、近年作曲家としての功績も再注目されている。ショパンが没した約20年後のポーランドに生まれた彼によるこれらの小品は、シンプルで甘いメロディを持つ。ダン・タイ・ソンの手によって、素朴さの中に秘められた豊かな情感が浮き彫りになることだろう。 多彩なプログラムで、ダン・タイ・ソン円熟の魅力が味わえそうだ。©佐藤寛敏アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団闘将が描く近代ロシアの管弦楽法の極み文:柴田克彦第715回 東京定期演奏会 11/1(金)19:00、11/2(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/ 今年4月のヨーロッパ・ツアーで大成功を収め、首席指揮者インキネンの2020年バイロイト音楽祭《ニーベルングの指環》デビューが決定するなど、ますます意気上がる日本フィル。その意気と演奏水準向上の立役者である桂冠指揮者兼芸術顧問アレクサンドル・ラザレフの存在も当然見逃せない。今年5月には何と歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》で驚嘆の名演を展開し、楽団のキャパを拡大。サウンドの圧倒的な容積とパワー、凄絶で高揚感に充ちた表現、徹底的なリハーサルと相まっての緻密な構築を併せ持つその演奏は、毎回が聴き逃せない“宝”と言っても過言ではない。 このところ彼は東京定期に年2回登場し、秋公演では「ラザレフが刻むロシアの魂SeasonⅣ グラズノフ」に取り組んでいる。来る11月定期の1曲目は、17年と16年に快演を残した第4、5番と共に中期三部作を形成する交響曲第6番。同曲は、ダイナミックな両端楽章に、変奏曲の第2楽章、間奏曲の第3楽章が挟まれた、グラズノフには珍しいほど多彩な作品で、彼ならではの管弦楽法の妙も存分に味わえる。これはグラズノフの交響曲の中でも“ラザレフいち押し”というから期待大! 後半はストラヴィンスキーの「火の鳥」。しかも組曲ではなく全曲版だ。4管の大編成で奏されるロシアのダイナミズムと精緻な綾が融合した音楽は、ラザレフの特質発揮にピッタリ。18年に同作曲家の「ペルセフォーヌ」で魅せた、抒情的にして色彩感溢れる雄弁なドラマを再び耳にすることができるに違いない。圧巻の音楽体験必至の本公演、むろん必聴だ。アレクサンドル・ラザレフ ©平舘 平

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