eぶらあぼ 2019.10月号
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54藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団会心のコンビが放つ、冴えた好プログラム文:江藤光紀第329回 定期演奏会 11/9(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 今春から東京シティ・フィルの首席客演指揮者に就任した藤岡幸夫が、早くも得意のプログラムで熱演を繰り広げてくれそうだ。 まずはヴォーン=ウィリアムズの「『富める人とラザロ』の5つのヴァリアント」。長く歌い継がれるイギリス民謡の異稿を集め、一種の変奏形式にまとめたもの。朗々と、そして時に厚く歌う弦楽合奏に、ハープのつま弾きが音の葉を散らす。イギリスで研鑽を積んだ藤岡が、本場の隠れた名品をまた一つ、開陳する。 続いてロシアの名門グネーシン音楽学校、そしてモスクワ音楽院を首席で卒業した若き才能・松田華音を迎え、プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」。松田は近作アルバムでもロシアものを披露しており、シャープな端正さとしなやかな優雅さのバランスが印象的。藤岡の情熱的なタクトは、しかし時としてソリストから思わぬ一面を引き出すから、彼女のスタイルも意外な方向に引っ張られていくかもしれない。 後半は伊福部昭の舞踊曲「サロメ」。1948年にバレエ版が作曲され、当時大変な人気を博したという。長らく行方不明になっていたスコアが再発見されたのを機に、作曲家自身が編みなおし、87年に発表したのが本作。こってりとした東洋趣味はもちろんのこと、執拗に繰り返される伊福部節が、狂乱したサロメの壮絶な最後を描き出す。 伊福部作品の演奏のキモは、粗削りのリズムと節回しに没入し、会場全体を神輿に群がる群衆のようなトランス状態にまで持っていけるか、にかかっている。この点において藤岡以上の指揮者はいないのではないだろうか。東京フィルハーモニー交響楽団 第15回 平日の午後のコンサート 〈ザ・コバケンⅠ〉平日の昼、熱き名演に触れる悦び文:林 昌英10/8(火)14:00 東京オペラシティ コンサートホール 問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp/ 近年のコンサートシーンにおける顕著な変化として挙げられるのが、平日の午後(日中)に行われる演奏会の増加だろう。その時間でこそ聴きに出かけたいというニーズに応えるべく、平日午後の定期的なシリーズを創設する楽団も現れた。その代表例のひとつが、東京フィルハーモニー交響楽団の「平日の午後のコンサート」である。 同楽団の「午後のコンサート」は平日・休日の2シリーズがあり、「平日」は今年度で4年目とまだ新しいが、東京オペラシティ コンサートホールの美しい空間で、とっておきの名曲の数々を指揮者のお話とともに楽しめる、人気のコンサートとなっている。指揮者ごとのキャラクターが反映されて、毎回違う雰囲気で楽しめるのも魅力だ。 10月8日の同シリーズには、小林研一郎が登場。公演タイトルはなんと「ザ・コバケン」。愛称に「ザ」が付くだけでそれ以上の説明不要という、小林の別格の存在感が何より伝わるタイトルで、期待がいや増す。プログラムは「ドナウ川のさざ波」「マドンナの宝石」間奏曲の2曲で開始。いずれも名旋律で知られながら意外と実演では聴く機会が多くなく、トークでどんなエピソードが語られるのかも興味を引く。続いてウェーバー《魔弾の射手》序曲で迫力の演奏を聴かせた後、メイン曲は“コバケンの十八番”ドヴォルザークの交響曲第8番。名曲の熱演をたっぷりと味わえるほか、本作にまつわるマエストロの思いを聴けるのも貴重。演奏とともに、穏やかで温かみのある語り口にも魅了されるに違いない。小林研一郎 ©上野隆文松田華音 ©Ayako Yamamoto藤岡幸夫 ©青柳 聡

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