eぶらあぼ 2019.10月号
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53©Akira Mutoイ・ムジチ合奏団(共演:天羽明惠)10/2(水)19:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotomusic.com/他公演 9/28(土)ハーモニーホールふくい(0776-38-8282)天羽明惠(ソプラノ)名門アンサンブルとの共演で映えるベルカント取材・文:山田治生Interview この秋来日するイ・ムジチ合奏団とソプラノの天羽明惠が初めて共演する。 「あの『四季』のイ・ムジチとの共演と聞いて、何がいいかなと思い、ヘンデルとモーツァルトにしました。私自身はバロックのスペシャリストではなく、オールマイティに活動したいと思っていますが、バロック音楽は、戸田敏子、エルンスト・ヘフリガーらの先生に、スタイルに関して厳しく教わりました。 《セルセ》から〈オンブラ・マイ・フ〉は、本来カウンターテナーの曲ですが、CMでのキャスリーン・バトルの歌唱で有名になりました。こういうレガート主体の曲と、もう一つは、《ジュリオ・チェーザレ》から〈この胸に息のある限り〉のようなコロラトゥーラを発揮できる曲を選びました。 モーツァルトの『エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)』は、何度も歌っている私のレパートリーのひとつです。イ・ムジチがどれだけ『四季』を演奏しても、毎回、音楽が新鮮なように、私もフレッシュな気持ちで歌いたいです。モーツァルトが私のために書いてくれたと思えるくらい作り込んで共演できればと思っています。 小学校・中学校の教材で『四季』を聴いた時もイ・ムジチだったと思います。そういう方々と共演できるのはとても楽しみです。彼らが素晴らしいアンサンブルを聴かせてくださるので、私は彼らにいかに歌わせてもらうかだけですね。特にイタリア語は彼らの言葉ですから、彼らに伝わるように歌えば、お客様にも届くと思っています。優れた人たちと演奏すると、歌いやすくなったりするんですよ。とにかく彼らは卓越した音楽家たちなので、期待しています」 天羽は、この夏にワルシャワでの第15回「ショパンと彼のヨーロッパ」国際音楽祭に参加し、8月17日、広島交響楽団とシンフォニア・ヴァルソヴィアによる合同演奏会(秋山和慶指揮)で、ベートーヴェンの「第九」の独唱を務めた。 「『第九』は、ベートーヴェンの求める音楽と楽器としての私とのあいだに相違があると思って歌っていませんでしたが、10年くらい前から歌い始めました。ポーランドは初めてでしたが、ワルシャワのフィルハーモニーは響き過ぎなくてすごく良いホールですね」 また、彼女は、「オペラぺらぺらコンサート」というオペラ・ファンの裾野を広げる活動やサントリーホールのオペラ・アカデミーで後進の指導にも取り組んでいる。 ますます活躍の場を広げる天羽明惠。イ・ムジチ合奏団との初共演では、得意のレパートリーで、この上なく澄んだ歌声を聴かせてくれるに違いない。カザルス弦楽四重奏団スペインが生んだ国際的クァルテットが待望の再来日文:林 昌英 スペインを代表するチェロの巨匠の名を冠し、現在バルセロナを拠点とするカザルス弦楽四重奏団。昨年にはサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンでベートーヴェン全曲を完奏し、鮮烈な演奏で好評を博したばかり。今秋早くも実現する再来日での公演も、ベートーヴェンを柱に、ウィーン古典派の巨匠3人の名品で勝負。フラット系の調性の4曲で、得意のハイドン「冗談」と、モーツァルト最後期の「プロシャ王第2番」に、ベートーヴェンの第6番と第11番「セリオーソ」が組み合わされる、こだわりのプログラム10/25(金)19:00 JTアートホール アフィニス問 メロス・アーツ・マネジメント03-3358-9005 https://www.melosarts.jp/他公演 10/26(土)兵庫/川西市みつなかホール(072-740-1117)が用意された。 歴史的研究を踏まえた構築に、強い表現意欲と豊かな感興が加わった鮮やかな演奏スタイルが持ち味のカザルス弦楽四重奏団。今回の公演チラシ裏面には、4人が同じバイクに乗って仲良く笑顔を浮かべている写真があり、彼らの特徴を表すカットとも言えそう。本公演もあたかもツーリングを楽しむかのような、痛快なパフォーマンスを楽しめそうだ。

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