eぶらあぼ 2019.10月号
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49ホール外観 (夜景)和洋の様式を取り入れた、各地で大反響のイノベーション・オペラ 原作は能の『卒塔婆小町』。高野山を下って都に向かう僧と従僧の前に、卒塔婆に腰かけた老婆が現れたが、実は彼女、かつて多くの男性を虜にした小野小町。そしていままた僧と従僧を生死の間に彷徨わせる、というストーリーだ。 織田英子作曲の音楽は幽玄の世界をオーケストラで表現し、世界的指揮者の西本智実が舞台をオペラティックに脚色および演出。西本がイルミナートフィルハーモニーオーケストラを指揮し、東西が融合したえもいわれぬ世界を現出させる。小町役の佐久間良子、従僧役の中村扇雀、僧役の杜けあき、の演技も見ものだ。 この美しく革新的な舞台の魅力や上演への意気込みについて、西本に聞いた。「もともと佐久間良子さんの魅力からインスピレーションを受け、この作品を創りました。これだけの規模の舞台をゼロから創るのは大変でしたが、没頭し、気づいたら初演を迎えていました。今回は中村扇雀さん、杜けあきさんもご出演くださり、それぞれの様式でどのように調和するのかを想像し、リハーサルを前にしてトキメキのようなワクワク感を覚えています」 事実、一昨年秋、富山のオーバード・ホールでの初演はかなりの話題になった。「初演は大きな反響がありました。その後、東京文化会館、大宮のソニックシティで上演を重ねることができ、今回、東京建物 Brillia HALLのこけら落とし公演に選ばれて光栄です。ホールの空間を幽玄の世界で満たしたいと思います」 幽玄、まさに、この作品の核心である。「オーケストラで虫の声を表現したり、和楽器的に聴かせたりする奏法は、イルミナートフィルのメンバーが自発的に編み出した独自のもの。織田さんも、小野小町の和歌をだれもが口ずさめるような雅調で書いてくださいました。和洋の音楽、古典と現代の芝居、舞踊と、さまざまな要素がある作品で、再演を重ねるごとに外国からのお客さまも増え、漢字や古典を共有するよろこびも生まれています。字幕も表示しますので、みなさんの感じる行間と音楽と芝居が呼応する舞台を創りたいと願っています」 オーケストラ好きもオペラ好きも演劇好きも、自分の嗜好を満足させながら日本美を再認識し、古典への造詣を深めることができる。一挙両得とはこのことだろう。西本智実 ©Akito KoyamaInformationINNOVATION OPERA 《ストゥーパ~新卒塔婆小町~》11/16 (土)16:00、11/17(日)14:00 東京建物 Brillia HALL演出・脚本・指揮:西本智実 作曲:織田英子出演:佐久間良子、中村扇雀、杜けあき 舞踊:玄 玲奈公達:杉江恭輔、濱田 翔、小仁所良一、石井基幾管弦楽:イルミナートフィルハーモニーオーケストラ合唱:イルミナート合唱団 & 川村学園コーラス部こけら落としシリーズについての問い合わせ先問 東京建物 Brillia HALL 劇場運営課03-6773-4919チケットについての問い合わせ先問 としまチケットセンター03-5391-0516https://toshima-theatre.jp/文:香原斗志

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