eぶらあぼ 2019.10月号
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218ジャンルを超越するのではない。もはや彼らの存在こそがひとつのジャンルなのだ。ヴォーカリストの藤澤ノリマサ、都響首席チェロ奏者の古川展生、サウンドプロデューサーとしても活躍するピアノの塩入俊哉が結成した異色ユニット「レジェンド オブ クラシックス」。今回はライヴハウスではなく、東京で初のホール公演。オリジナル曲はもちろん、シャンソンからタンゴ、映画音楽まで、センセーショナルな音の宇宙を構築する。ともに京都を拠点として国際的な活動を展開する、チェロの上村昇とピアノの上野真。二人の名手が2回に分けて、“チェリストの新約聖書”と称される、ベートーヴェンのソナタ全5曲と3つの変奏曲に挑む。第1回はソナタ第1、2、5番と、「ヘンデル『ユダス・マカベウス』より〈見よ、勇者は帰る〉の主題による12の変奏曲」を。上野は、修復なったばかりの1845年ウィーン製シュヴァイクホーファーの銘器を弾く。往年の巨匠・平岡養一が愛用した1935年アメリカ製の木琴を受け継ぎ、変幻自在に響きを操って、魅力的な音楽を創り出す通崎睦美。今回は、国内で稀有な常設の弦楽四重奏団として精力的に活動するクァルテット・エクセルシオとの共演で。モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」など平岡の愛奏曲や、台湾出身の江文也が彼に献呈した作品、木琴ソロのためのオリジナル、バロックの編曲など彩り豊かに紡ぐ。8歳でニューヨーク・フィルとの共演でデビュー以来、国際的な活躍を続ける人気ヴァイオリニスト、サラ・チャン。40歳を目前に、磨き上げた技巧や音色へ深化した精神性を併せ持ち、円熟の時を迎えている。彼女が「大親友」と認めるピアノの名手、フリオ・エリザルデとのステージ。フランクのソナタで滋味を、ラヴェル「ツィガーヌ」で超絶技巧を、エルガー「愛の挨拶」など小品で歌心を堪能させてくれる。月の10上村 昇(チェロ) & 上野 真(ピアノ)ベートーヴェン チェロ・ソナタ全曲演奏会 第1回通崎睦美(木琴) × クァルテット・エクセルシオ池田京子(ソプラノ)~尽きせぬ愛、そして祈り~レジェンド オブ クラシックス「愛しき共犯者たちへ」山下一史(指揮) 千葉交響楽団 第106回定期サラ・チャン(ヴァイオリン)10/2(水)19:00 京都府立府民ホール アルティ10/11(金)14:00 19:00 王子ホール10/3(木)19:00 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール10/2(水)19:00 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール10/12(土)14:00 千葉県文化会館10/7(月)19:00 紀尾井ホール文:笹田和人上村 昇上野 真©Colin Bell under license to EMI Classics通崎睦美 ©中川忠明左より:塩入俊哉、藤澤ノリマサ、古川展生池田京子は名古屋市出身、東京藝大・同大学院からドイツに学んだ実力派ソプラノ。国内外で活躍する一方、信州大学教授として後進の指導にも力を注ぐ。今回は、ピアノの花岡千春と共演。まずは、R.シュトラウス「3つの愛の歌」をはじめ、愛を歌ったドイツリートを。さらに、平和への祈りが込められた、信長貴富や朝岡真木子ら現代の邦人作品などを交えて。素敵な言葉とハーモニーが彩る、名歌曲の花束だ。鮮烈な“響きの妙”が体感できよう。2016年に改称してから3年、地域との絆をいっそう深め、覇気あふれる快演でファンを増やし続けている千葉交響楽団。10月の定期は、音楽監督・山下一史のタクト、ゲスト・コンサートマスターに堀正文を迎えて。劇的なブラームス「交響曲第1番」を軸に、堀を独奏に据えての「ヴァイオリン協奏曲第3番」と歌劇《後宮よりの逃走》序曲で、モーツァルトの軽妙な側面を披露する。山下一史 ©ai ueda堀 正文

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