eぶらあぼ 2019.10月号
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198CDCDCDラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 他/イーヴォ・ポゴレリチMozart Live/石田泰尚シューマン Vol.2/梅村知世青空の向こうに―心に沁み入るギタリスト/木村眞一朗ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第22番・第24番「テレーゼ」ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番イーヴォ・ポゴレリチ(ピアノ)モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第14番・第15番・第35番・第2番・第41番・第11番・第12番・第28番・第1番・第42番/クライスラー:道化師、クープランのスタイルによる才たけた貴婦人、ベートーヴェンの主題によるロンディーノ、ウィーン小行進曲 他石田泰尚(ヴァイオリン)中島剛(ピアノ)シューマン:子供の情景、アラベスク、花の曲、フモレスケ/シューマン(リスト編):春の夜梅村知世(ピアノ)バリオス:ワルツ第4番/マイヤーズ:カヴァティーナ(ディア・ハンターのテーマ)/タレガ:椿姫の主題による幻想曲/リョベート:「カタロニア民謡」より〈盗賊の歌〉〈アメリアの遺言〉/タンスマン:カヴァティーナ組曲/レノン=マッカートニー(武満徹編):イエスタデイ/佐藤弘和:静かな子守歌、エヴァーグリーン、青空の向こうに 他木村眞一朗(ギター)ソニーミュージックSICC-30512 ¥2600+税収録:2019年2月&3月、横浜市栄区民文化センター リリス(ライヴ)フォンテックFOCD9816/7(2枚組) ¥3500+税オクタヴィア・レコードOVCT-00169 ¥3000+税ソナーレ・アートオフィスSONARE1044 ¥2400+税大胆かつ優雅、そして説得力に満ちた演奏で、ポゴレリチが21年ぶりに録音の世界へと帰ってきた! ソニー・クラシカルとの長期専属契約第1作となるアルバムである。彼の意気込みは、ラフマニノフのソナタ第2番を選曲し、またこのアルバムにベートーヴェンの第22・24番のソナタという、密かに革新的なピアノ奏法・書法が追求された作品を据えていることからも窺える。フレッシュでパワフルなベートーヴェン、冒頭の崩れ落ちるようなアルペジオから強烈に惹き込まれるラフマニノフ。心臓に響くような低音や、随所に現れる濃密な間合いが美しく、ポゴレリチの今の芸術を存分に伝える。(飯田有抄)孤高に屹立するジャケットビジュアルと、作品への敬意と清潔感にあふれる丁寧な演奏。このギャップこそヴァイオリニスト石田泰尚の魅力だろう。このモーツァルトアルバムは2日間のライヴ録音で、経験豊富な中島剛のピアノとともに芯のある澄んだ音色で巧みに弾ききり、一見素朴な造形の中に絶妙なニュアンスを散りばめる。中後期の名品はもちろん、幼少期の作品群も本質をとらえて美しい(わずか9歳のK.27には思わずため息)。アンコールは両日ともクライスラーの小品3曲。石田は肩の力を抜きながら品の良い名技を見せ、新旧ウィーンの名作曲家のつながりをも感じさせる。(林 昌英)シューマンをこよなく愛するピアニスト梅村知世の待望のアルバム第2弾。2016年のシューマン国際コンクールで第2位(最高位)を収め、現在もベルリンで研鑽を積む梅村は、しなやかな感性と誠実・知的なアプローチでシューマンの世界を描き出す。甘すぎず、ときに骨太な響きも効かせる「子供の情景」、音楽の自然な流れが美しい「アラベスク」や「花の曲」、声部をクリアに整理し内省的な表情を描く「フモレスケ」など、青年期のシューマンのみずみずしい音楽を何度でも味わいたくなるような一枚。シューマン=リストの「春の夜」は、音色に一段と輝きを持たせている。(飯田有抄)話題の映画公開も控えて活気づく日本のクラシック・ギター・シーンにまた一人、俊英が登場。1994年生まれ、木村眞一朗のデビュー盤は南米の人気作品から、スペインの巨匠によるオペラ幻想曲、映画音楽、武満徹編曲のビートルズ・ナンバーと王道を網羅しつつ、“パリのポーランド人”タンスマンの抒情的な「カヴァティーナ組曲」などが秀逸。加えて、作・編曲家として活躍しながら2016年に50歳で病没し、広く惜しまれた佐藤弘和の作品も聴きもの。心に沁み入る「静かな子守歌」と伸びやかな「エヴァーグリーン」も素晴らしいが、やはりアルバム表題曲に心を奪われる。 (東端哲也)CD

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