eぶらあぼ 2019.10月号
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196CDCDCDCDヘンデル:歌劇《シッラ》/ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテラフマニノフ:交響曲第2番、モシュコフスキ:組曲「諸国から」/角田鋼亮&セントラル愛知響バッハ:ゴルトベルク変奏曲/塚谷水無子邦人作曲家・打楽器アンサンブル作品集/上野信一&フォニックス・レフレクションヘンデル:歌劇《シッラ》ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン/指揮) ソニア・プリナ(コントラルト) マルティナ・ベッリ ヴィヴィカ・ジュノー(以上メゾソプラノ) スンヘ・イム ロベルタ・インヴェルニッツィ(以上ソプラノ) ルカ・ティトット(バス) エウローパ・ガランテ 他ラフマニノフ:交響曲第2番モシュコフスキ:組曲「諸国から」角田鋼亮(指揮)セントラル愛知交響楽団J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲塚谷水無子(トイピアノ)湯浅譲二:プロジェクション・トランスソニック/安良岡章夫:10スティックス/松平頼暁:トライクロイズム/岸野末利加:Sange/散華―平義久師へ捧ぐ追悼曲―/福士則夫:青海波上野信一(指揮/パーカッション)フォニックス・レフレクション【悪原至 伊藤すみれ 鐘ヶ江肇 亀尾洸一 木次谷紀子 佐藤直斗 高口かれん 戸口あおい 富田真以子 新野将之 新田初実 曲淵俊介 峯崎圭輔(以上パーカッション)】GLOSSA/東京エムプラスOGCD923408(2枚組) ¥4000+税収録:2019年4月、愛知県芸術劇場コンサートホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00701 ¥3000+税Pooh’s HoopPCD-1812 ¥オープンコジマ録音ALCD-7240 ¥2800+税知られざるバロック・オペラに光を当てる、ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテのヘンデル・プロジェクト。第2弾は、ロンドン時代の第4作《シッラ》(1713年)を取り上げた。自らの欲望のためには人の心をも踏みにじる、古代ローマの背徳の暴君が題材だけに、作品の価値に疑問を呈する研究者も。しかし、実際にはヘンデルらしい音楽的な魅力に溢れ、とりわけアリアは名旋律の宝庫だ。当録音では、器楽・声楽とも骨太かつ端正な快演で、その美点を余さず表現。シッラに対抗する“愛と良心の化身”とも言うべき、騎士クラウディオ役のマルティナ・ベッリの名唱が、特に光る。(寺西 肇)角田鋼亮は管弦楽にオペラにと、着実にキャリアを積み上げている実力派だ。今年4月にセントラル愛知響の常任指揮者に就任。これはその記念演奏会の模様だが、両者は2005年より共演を重ねており、すでに十分な意思疎通が取れているようだ。ラフマニノフの交響曲第2番は落ち着いたリードで引き締まったサウンドを作り、丁寧に進める。旋律は甘く伸びやかに歌い、ここぞというところではパンチを効かせてメリハリを付ける。6つの国の音楽の特徴を捉えたモシュコフスキの組曲「諸国から」は、それぞれをきっちり描き分けながらパリッと鳴らしている。ブレのない正統的な解釈で、充実の仕上がりだ。(江藤光紀)何という発想! 各種トイピアノによって「ゴルトベルク変奏曲」を弾いた本ディスク、まず魅了されるのは60台(!)以上もの楽器を駆使して演奏されたそれぞれの変奏での音質やピッチなど、余りに異なる個性。普通のピアノどころの違いではないが、アリアと変奏合わせて33曲(32曲+デジタルなアリア)をすべて楽器配置や細かい音量、音色まで調整して録音した、という非常な労作でもある。この辺りは充実したライナーに詳しいが、やんちゃ坊主が33の仕方でおのおの暴れているかのようなこの「ゴルトベルク」、曲を熟知した聴き手はもちろん、初心者にもインパクト大、必聴。(藤原 聡)トゥールーズ・キャピトル管の首席奏者等を歴任後、マルチな打楽器奏者として活躍する上野信一と、彼が1988年に結成した打楽器グループによる新録音。ちなみに本作に参加した13人(フリー)のうち10人を国立音大の出身者が占めている。収録されているのは、邦人作曲家が2006〜18年に書いた5〜8人のアンサンブル作品で、全曲が世界初録音となる。演奏は鮮烈。冒頭の湯浅譲二作品の清新な音の綾がいきなり耳を奪い、その後も各人が個性を発揮したエネルギッシュなサウンドが続く。刺激的な音響体験を得られる上に、オーディオ的にも妙味十分だ。(柴田克彦)

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