eぶらあぼ 2019.10月号
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97堀米ゆず子(ヴァイオリン)と女神たち響き合うヴァイオリンのソノリティ文:笹田和人10/25(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 ヒラサ・オフィス03-5727-8830 http://www.hirasaoffice06.com/ まさに、ミューズの饗宴だ。1980年に日本人として初めて、エリーザベト国際コンクールの覇者となり、今もなお第一線を走り続ける堀米ゆず子。彼女を軸に、米元響子、有希マヌエラ・ヤンケ、青木尚佳という4人の国際派ヴァイオリニストが一堂に会し、名旋律の数々を、艶やかに紡ぎ上げる。 1741年製の銘器グァルネリ・デル・ジェスを操り、世界の一流オーケストラと共演を重ね、小澤征爾ら巨匠からの信頼も厚い堀米。国内でも数多くのプロジェクトを手掛け、ブリュッセル王立音楽院などで後進の指導にも力を注ぐ。 今回、そんな彼女が共演者に選んだのが、前述の気鋭の女性奏者たちだ。1997年にパガニーニ国際コンクールで2位入賞を果たした米元をはじめ、2004年に同じく最高位の第2位のヤンケ、そして、14年にロン=ティボー国際コンクールで第2位となった、堀米の愛弟子でもある青木だ。 ステージではまず、テレマンの「協奏曲」や、20世紀ポーランドの女性ヴァイオリニスト・作曲家のバツェヴィチの「四重奏曲」と、4つのヴァイオリンのみという特異な編成のためのオリジナル作品を披露。そして、バロック・ヴァイオリニストのヒロ・クロサキが編曲した、モーツァルトの歌劇《魔笛》からの名旋律を。 後半では、プッチーニの歌劇から2つの名アリア、ブラームスの「ハンガリー舞曲第1、5番」、そして、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」とサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を、いずれも大橋晃一の編曲で。未体験の“キャトル・ヴィオロン(4ヴァイオリン)”の魅力を堪能できよう。誰がどの曲を弾くのかは発表されていないが、これも当日のお楽しみだ。ラ・クァルティーナ(チェロ四重奏)N響の腕利きチェリスト4人が醸し出す美しきハーモニー文:オヤマダアツシ10/25(金)19:00 文京シビックホール(小)問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp/hall/ チェロ4台というアンサンブルの可能性は、個性的かつ卓越した音楽性と技術をもつ奏者が集まった場合、計り知れないものになる。それを証明しているのがNHK交響楽団に所属する奏者たちによって結成され、15年以上もの間、さまざまなレパートリーを開拓してきた「ラ・クァルティーナ」だ。メンバーは、藤森亮一、藤村俊介、銅銀久弥、桑田歩。豊かさと力強さを兼ね備えたサウンド、多彩な表情によって浮かび上がる歌心、絶妙な編曲による名曲の数々は、チェロ四重奏というスタイルを定着させたのと同時に、アマチュア・チェロ奏者にとっても素晴らしい手本かつ目標となってきた。 その「ラ・クァルティーナ」が2年ぶりに文京シビックホール小ホールで開催するコンサートも、なかなか意欲的な選曲である。中でもこのコンサートが初演となるチャイコフスキーの「くるみ割り人形」(抜粋・新編曲版)は、次々に変化するリズムや雰囲気を描ききって名演を聴かせてくれるはず。同じ作曲家の「アンダンテ・カンタービレ」やピアノ曲「四季」からの抜粋は、優美なチェロの音に心ゆくまで浸れるだろう。さらにはシューマンのチェロ協奏曲を四重奏で聴かせたり、チェロ・アンサンブルの世界ではなじみ深いユリウス・クレンゲルの作品、そしてバッハの無伴奏チェロ組曲第3番からも。メンバー全員が充実した音楽を奏でる演奏家だけに、心が豊かになるひとときになるはずだ。秋の夜に、チェロの音はよく似合う。米元響子 ©Hirotada Onaka有希マヌエラ・ヤンケ ©井村重人青木尚佳 ©井村重人堀米ゆず子 ©T.Okura藤村俊介銅銀久弥桑田 歩藤森亮一 ©林 喜代種

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