eぶらあぼ 2019.9月号
75/195

733rdアルバム発売記念 須田祥子(ヴィオラ) リサイタルビオラは歌う3~魔王/ロメオとジュリエットCDとライヴで魅せるカンタービレ文:林 昌英 東京フィルハーモニー交響楽団首席ヴィオラ奏者であり、熱い演奏姿で同団の顔のひとりともなっている須田祥子。国内屈指の名手でありながら、ヴィオラの魅力を広く伝える努力も惜しまない。ソロ活動はもちろんのこと、テレビ出演や、ヴィオラ演奏集団「SDA48」を主宰してファン層を拡大するなど、様々なアプローチでその多彩な面白さを表現しているのである。 そんな須田が、ヴィオラへの愛を詰め込んだCDシリーズ『ビオラは歌う』の第3弾をリリース。聴くほどに味わい深く、心温まる歌にあふれたアルバムだ。9月には、その発売記念として収録曲を中心としたリサイタルが開催され、実演でその世界を体感できる。ピアノはCDでも須田の表現に寄り添いながら、美しく意味深い表現を聴かせた松本望。 公演前半はシューベルト。歌曲の編曲では「ヴィオラこそ人間の声に近いのだ」と感じられるはず。「魔王」の自在な音色変化と超絶技巧も聴きもの。CDにはない「アルペジオーネ・ソナタ」を、いまの彼女の名技で聴けるのは嬉しい限りで、充実の“歌”を堪能できそうだ。後半はまずプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」で、CDでも名編曲の秀演だったが、実演なら感銘はより深まるはず。特に抒情的な場面の美しさは格別だろう。メインは20世紀イギリスの女性作曲家レベッカ・クラークのソナタで、技巧性の中に陰りのある美しい歌心が表現された、ヴィオラ・ファンならずとも聴いてほしい名品。“歌うヴィオラ”の魅力をたっぷり堪能する。フラックス弦楽四重奏団超高感度のクァルテットによるバルトークと現代作品、そして一柳の全曲!文:伊藤制子《系譜》family tree of American Composers 2020.1/11(土)15:00《一柳慧 弦楽四重奏曲 全曲演奏会》 2020.1/18 (土) 15:00 神奈川県民ホール(小) 9/7(土)発売問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-kenminhall.com/※関連企画などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 神奈川県民ホールは、開館45周年記念として神奈川芸術文化財団芸術総監督をつとめる一柳慧プロデュースによるフラックス弦楽四重奏団の公演を行う。2015年来日の際にも、その実験精神あふれる演奏が高く評価されたこのクァルテットは、1990年代後半に、ヴァイオリンのトム・チウによって結成。現代作品を中心に膨大なレパートリーを誇り、国際的に活躍中だ。 今回は2公演が開催される。まず2020年1月11日公演では、ナンカロウの第3番、バルトークの第5番といった20世紀作品から、最近作まで織り交ぜて、多彩な世界を表現する。とりわけ注目なのは、シカゴ響の2018/19シーズンでコンポーザー・イン・レジデンスをつとめた若手エリザベス・オゴネク(1989~)の「ランニング・アット・スティル・ライフ」。彼女は招聘作曲家として、来年1月13日に開かれる日米の現代音楽についてのシンポジウムにも参加予定だ。そして、1月18日には一柳の弦楽四重奏曲全曲を一挙に演奏するという大胆な企画も用意。幅広いジャンルで創作を展開してきた一柳だが、弦楽四重奏曲は彼の作曲の核になるジャンルのひとつ。1957年の作品から、「インタースペース」(1986)といった秀作、そして今回日本初演となる第5番(2018)まで、一柳のこれまでの歩みをまとめて聴くことができる。 関連企画として、公募で選出された弦楽四重奏曲を作曲家とフラックス弦楽四重奏団とで仕上げていく過程を公開する「ワークインプログレス」(20.1/9)などもあるので、あわせて楽しみたい。9/20(金)19:00東京オペラシティ リサイタルホール問 SDA48事務局080-4002-3058CD『ビオラは歌う3』N&F MF25903¥2800+税「La Valse by ぶらあぼ」では、須田祥子さんのスペシャル動画コンテンツを公開中。ぜひご覧ください! https://member.ebravo.jp/©K.Hirano

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る