eぶらあぼ 2019.9月号
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50下野竜也(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団卓越したプログラミングで聴かせるドイツ三大Bの名曲文:林 昌英第328回 定期演奏会 10/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 下野竜也といえば、いわゆる名曲と演奏機会の多くない作品を絶妙に組み合わせて、それらの真価を聴かせることを得意とする名指揮者である。オッフェンバック&スッペにシェーンベルクを加えた、東京シティ・フィルの2月の定期演奏会はその好例だろう。その下野が、10月の同団の定期では、あえて「ドイツ三大B」の名作による王道プログラムを組み、注目を集めている。 最初はJ.S.バッハで、オルガン曲「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け BWV622」のレーガー編曲版を。原曲は穏やかな小曲ながら、大曲に匹敵する宇宙的な広がりをもつ感動的な逸品。この編曲は弦楽合奏版で、原曲以上に温かいハーモニーと旋律美が味わいやすく、深い充足感を得られる5分間になるはず。下野はこれまでも本作を各地の楽団で取り上げていて、彼の名刺代わりとも言える渾身の1曲だ。 次はブラームス。長くウィーン・フィルのコンサートマスターを務め、数々のブラームスの伝説的名演の中心にいたライナー・キュッヒルのソロで、ヴァイオリン協奏曲を。彼のボウイング、ヴィブラート、歌い回し、いずれも濃厚そのもので、現代の潮流とは一線を画す音色は無二のもの。共演経験のある下野と共に、屈指の名曲を濃密に聴かせる。 そして最後はベートーヴェン。名曲の王者、交響曲第5番「運命」である。広島交響楽団音楽総監督を務めて円熟の域に入っている下野と、好調を維持する東京シティ・フィルによる「運命」、直球勝負の熱演が大いに期待できる。ライナー・キュッヒル ©Winnie Küchl横山幸雄 ピアノ・リサイタル ベートーヴェン・プラス Vol.6目指すはベートーヴェン全曲という名の“頂”文:長井進之介9/23(月・祝)11:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/ 日本を代表するピアニストの一人であり、その圧倒的な演奏、他の追随を許さない意欲的な企画によって常に聴衆に驚きを与えてきた横山幸雄。2011年のデビュー20周年にはショパンのピアノ独奏曲全曲演奏を行い、ギネス世界記録に認定されたが、それからも彼は歩みを止めることなく積極的な演奏活動を展開してきた。 13年にスタートした「ベートーヴェン・プラス」もその一つ。ベートーヴェンによって作品番号が与えられた全曲と、関連する他の作曲家の作品を組み合わせるというコンセプトによるシリーズだ。今回はオール・ベートーヴェン・プログラムで、より深くこの作曲家と対峙していく横山を目撃することになるだろう。 昨年と同じく5部構成をとり、11時から第1部が開始し、15時40分から第5部が開始。「悲愴」「月光」「熱情」「ワルトシュタイン」「テンペスト」という代表的なピアノ・ソナタに加え、ソナタ第24番「テレーゼ」から第29番「ハンマークラヴィーア」までの6曲という、ベートーヴェンが次々と名作を書いた“傑作の森”以降のソナタを並べ、彼のピアノ・ソナタ創作の歴史を俯瞰するかのようなプログラムとなっている。「創作主題による6つの変奏曲 ニ長調 op.76」に「幻想曲 ト短調 op.77」、さらに「ポロネーズ ハ長調 op.89」という、演奏機会は少ないが、ベートーヴェンが作曲家として充実し、更に進化していく様が見て取れる佳曲の演奏にも注目したい。©アールアンフィニ下野竜也 ©Naoya Yamaguchi

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