eぶらあぼ 2019.9月号
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46梶川真歩Hakuju サロン・コンサート Vol.3 大萩康司 & 梶川真歩ギターとフルートが織りなす音の世界10/25(金)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp/大萩康司(ギター)& 梶川真歩(フルート)「初めて聴いたけどかっこいいね」と思ってくれれば最高です!取材・文:オヤマダアツシInterview フルートとギターのデュオは、コンパクトで爽快なサウンドを生み出す室内楽だといえるが、コンサートは意外に少ないだけに可能性を秘めている組み合わせだ。 NHK交響楽団での演奏を軸に多彩な活動をしている梶川真歩、2020年にデビュー20周年を迎える大萩康司の2人が、10月にHakuju Hallで行う「サロン・コンサート」は、2つの楽器のデュオに新しい時代をもたらすような一夜となるかもしれない。初共演となる2人だが、レパートリーの開拓や聴き手を楽しませてくれる意欲は並々ならぬものがある。 「演奏者がお客様を自分のサロンに招くという、とても親密な雰囲気を大切にしたコンサートですから、純粋に演奏したい曲や、これを聴いて欲しいと思える曲を選びました。とても“私たちらしさ”の出た個性的なプログラムになり、これからフルートとギターの新しいレパートリーとして定着することも願っています。楽器を演奏している方にも『こんなにいい曲があるのか!』と驚いていただけるでしょうし、初めてフルートとギターのデュオを聴くという方にも楽しんでいただける選曲です」(梶川) その選曲は、ギター界でおなじみのジュリアーニや、カステルヌオーヴォ=テデスコのソナティナ(近年見つかったオリジナル稿での演奏)、さらにはプーランクの金管三重奏ソナタを編曲した珍しいものもある。しかし知名度の高低なく「初めて聴いた作曲家や曲だけどいいね、かっこいいね」と思っていただければ最高だと、2人は話す。 「フルートとギターのデュオは工藤重典さんと福田進一さんが道を開いてくれましたが、自分たちは敬意を払いながらも甘んじることなく、さらに新しいレパートリーを構築していくつもりです。梶川さんのように音楽で会話ができる奏者との共演は自分にとっても新しい発見へつながりますし、自分自身が新鮮な気持ちでステージへ立てると楽しみにしています。Hakuju Hallは自然体で演奏ができ、音が気持ちよく広がっていく空間ですから、本当に幸せなコンサートになるでしょうね」(大萩) 無理に大きな音を出す必要のない空間であるため、繊細な音や表現までを追求でき、2人にとっては最高級の音楽を届けることができる場を得たといえるだろう。今回のコンサートは「結成第1弾」などと銘打っていないものの、これからの活動も楽しみなデュオの誕生となりそうだ。これを聴き逃すのはもったいない。フレディ・ケンプ ピアノリサイタルショパン作品で魅せる芳醇な味わい文:伊熊よし子 1998年のチャイコフスキー国際コンクールは、ひとりの「コンクールのヒーロー」を世に送り出した。ドイツ人の父と日本人の母のもと、77年ロンドンに生まれ、第3位に入賞したフレディ・ケンプである。スケールの大きな華やかさを備えたピアニズムと甘いマスクに人気が集中し、一躍注目されることになる。だが彼は「コンクールのヒーロー」ではなく自分の名前で勝負したいと、ひたすら練習に明け暮れ、年に100回を超すコンサートをこなし、実力派へと歩みを続けていった。9/20(金)19:00 紀尾井ホール問 オーパス・ワン042-313-3213http://opus-one.jp/ 定期的に来日しているケンプは常に新たな作品を披露して成長ぶりを示しているが、今回は待望の「オール・ショパン・プログラム」。バラードとスケルツォのそれぞれ第2番・第4番などを弾く。ケンプのピアノは楽器を豊かに鳴らすものだが、内声部の美しさも際立たせながら息の長いフレーズをゆったりとうたわせる。さらに弱音を自然に響かせ、静謐な音色で余韻を楽しませる。ショパンでは真価を発揮、馨しい美音を放つ音楽が生まれるに違いない。大萩康司 ©ビクターエンタテインメント

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