eぶらあぼ 2019.9月号
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44東京バロックプレイヤーズ イタリアン・レジェンドとの出逢い9/17(火)19:00 王子ホール 問 目の眼03-6721-1152上野星矢(フルート)バロック音楽の新しいあり方を求める取材・文:宮本 明Interview フルートの上野星矢が2016年に結成した「東京バロックプレイヤーズ」(TBP)が、元イ・ムジチ合奏団のフェデリコ・アゴスティーニをメイン・ゲストに迎えて公演を行う。TBPのメンバーは古楽演奏にも通じた顔ぶれだが、基本的にはモダン楽器で演奏するグループ。 「今のところはそうですが、そこにこだわらないことを意識しています。練習はずっとバロック・ヴァイオリンで弾いて、本番の前日にモダンに変えたりしたことも。話し合いながら試行錯誤を重ねて、会場や曲目に最適と思われる編成で演奏したいと思っています」 上野自身は本来、バロック音楽はピリオド楽器、ピリオド奏法で演奏すべきだと考えていたそうで、留学したパリやミュンヘンではフラウト・トラヴェルソも学んだ。 「いまはTBPでは黒檀のモダン・フルートで吹いていますが、いつかいきなりトラヴェルソを吹くかもしれません」 その柔軟な考え方のヒントを与えてくれた一人がアゴスティーニだった。 「以前共演して、モダン楽器でもこんなふうにバロックを演奏できるんだと気づかされました。モダン楽器だと、どうしても音の強さでロマンティックに表現することが多いのが疑問だったのですが、フェデリコさんの演奏を聴いてそれがクリアになったんです。あくまで作品を表現する手段ですから、逆にスタイルに固執しすぎてしまうと、最終的に作品の良さにリーチすることが難しくなってしまうことがある」 「ザ・王道です」という今回のプログラムのメインは、各パート一人で演奏する「ブランデンブルク協奏曲第5番」。 「大編成で演奏するとチェンバロの華やかなソロ・パートが聴こえない。本来このぐらいの編成だったと思います。ヴァイオリンとフルートとの異なる音質を持つ楽器のソリスティックな対話。そして小編成なので、すべてのパートが浮き上がるような、バッハが隅々まで構築した、どこにも無駄のない音楽を楽しんでいただけると思います」 当日はモーツァルトのフルート四重奏曲ニ長調や、ルクレールの2本のヴァイオリンのためのソナタ ホ短調なども。ほかの時代の音楽を演奏するうえでも物差しにしているというバロック。現在の上野にとってTBPは活動のひとつの核だが、モダンのレパートリーとの「棲み分け」は考えていない。今年も11月にサントリーホールでソロ・リサイタルを開くが、そちらでも今後もバロックを演奏することもあるし、逆にTBPで現代曲を演奏することだってあるかもしれないという。思考はあくまで自由、柔軟だ。 「TBPは変幻自在、と思ってください」 新しい視点のバロック・アンサンブル。注目だ。東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 藤元高輝(ギター)ギターの可能性を追求し続ける俊英登場文:山田治生 東京オペラシティの「B→C」に、ギタリストの藤元高輝が登場する。1992年生まれの彼は、2011年の東京国際ギターコンクールで第1位、今年6月にはハインツベルク国際ギターコンクールでも優勝を飾るなど、国内外のコンクールに優勝・入賞する逸材。また、ギターだけでなく、作曲や指揮も学ぶなど、広い視野を持つ音楽家である。 今回のリサイタルでは、バッハ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」から、ソル、アセンシオ、ヘンツェ、カステルヌオーヴォ=テデスコ、伊左治直の新作まで、18世紀から21世紀に至る音9/10(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp/©Hasumi Yamato楽が集められている。ソルの「グランド・ソナタ第2番」は、クラシック・ギターの魅力を満喫できる大作。イエペスの師であるアセンシオの「内なる想い」は、スペインのギターの名曲。カステルヌオーヴォ=テデスコの「悪魔の奇想曲」は、パガニーニの曲も引用される、超絶技巧作品だ。伊左治は、藤元の作曲の師でもあり、今回は藤元によって委嘱された新作が世界初演される。

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