eぶらあぼ 2019.9月号
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37マルク・ミンコフスキ(指揮) 東京都交響楽団仏の鬼才が超名曲の姿を一新!文:柴田克彦第888回 定期演奏会 Aシリーズ 10/7(月)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ ミンコフスキの都響客演時のプログラムは、毎回意表を突いている。2014年の初共演時はビゼー・プロ、15年はブルックナーの交響曲第0番他、17年は同じく第3番他、18年はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」…彼はこれら全ての演目で発見の喜びに充ちた音楽を展開してきた。そして5回目の共演となる19年10月定期は、シューマンの交響曲第4番(1841年初稿版)とチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」というこれまで以上に意外な選曲。中でも後者は未知の魅力に溢れている。 1962年パリ生まれのミンコフスキは、82年に設立したレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル等での古楽演奏で名を上げた後、ベルリン&ウィーン・フィルへの客演などモダン・オケでも活躍。現在はボルドー国立歌劇場の総監督、オーケストラ・アンサンブル金沢の芸術監督を務めており、近年の定期的な客演が示すように都響との相性も抜群にいい。 彼の音楽の特徴はまず無類の愉悦感、さらには緻密さ・精妙さとダイナミズムの共存だ。特に後者の面は、都響とのブルックナーの交響曲でも発揮され、表情豊かで瑞々しい0番、精緻で重層的な3番を聴かせてくれた。それは両曲と同じく短調でシリアスな今回の2曲に通じること必定。シューマンの4番の初稿版は、耳慣れた改訂版に比べると室内楽的で骨格が明瞭ゆえに、持ち味がフルに発揮されそうだし、「悲愴」は、ブルックナー両曲の表現を併せ持った、既成概念を一新するアプローチが期待される。むろん都響の極上の機能性も大きな味方。名曲の新たな姿が出現する予感に胸が踊る。マルク・ミンコフスキ ©Benjamin Chelly / les Echos第16回チャイコフスキー国際コンクール 優勝者ガラ・コンサートあの興奮が再び! オール・チャイコフスキーの饗宴文:高坂はる香10/8(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 去る6月に開催され、ピアノ部門で藤田真央が第2位に入賞したこともあって日本でも注目を集めた、第16回チャイコフスキー国際コンクール。ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、声楽部門に、今回から金管と木管楽器部門も加わり、全6部門から若き才能が世の中に紹介された。 そんな入賞者たちの一部が早くも日本にやってきて、飯森範親指揮、東京交響楽団と共演する。東京でのガラ・コンサートに出演するのは、まずピアノ部門第2位のドミトリー・シシキン。2015年のショパン国際ピアノコンクール入賞以来、日本でも注目されてたびたび来日しているが、今回は一段と磨きのかかった重く美しい音で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を披露してくれる。 チェロ部門第2位のサンティアゴ・カニョン=ヴァレンシアは、南米のコロンビア出身ということもあって注目を集めていたコンテスタント。個性的な外見と躍動感ある音楽性がマッチする彼は、「ロココの主題による変奏曲」を演奏する。 そして、ヴァイオリン部門は、優勝したセルゲイ・ドガージン。前々回の同コンクールで1位なしの2位(最高位)として来日しているので、記憶している方もいらっしゃるだろう。8年越しの再挑戦では、確信と力強さの増した演奏で、ついに頂点に輝いた。 ロシアの伝統あるコンクールで認められた若者たちが、キャリアの門出に演奏するオール・チャイコフスキー・プログラム。祝祭感に満ちた雰囲気の中で、その実力を堪能しよう。左より:ドミトリー・シシキン/セルゲイ・ドガージン/サンティアゴ・カニョン=ヴァレンシア 写真3点 ©Evgeny Evtykhov

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