eぶらあぼ 2019.9月号
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33問 高崎芸術劇場027-321-7300/高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900(9/20以降開通)※オープニング事業ラインナップの詳細は、右記ウェブサイトでご確認ください。 http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/吹き抜けの空間に設けられたエスカレーターからは各階の様子が見渡せる下りに苦労しない設計が“今風”。大劇場の入り口に至るまでも段差がなく、建物全般にバリアフリーの思想が一貫しているのも、新しい劇場ならではだ。 なお、音響設計には、クラシック音楽ファンにはおなじみ、永田音響設計が携わっている。実際の響きはオープンしてからでなければわからないが、満席時の残響は2秒程度に想定されているとのこと。バランスのとれた音響を期待できそうだ。 9月20日の開館記念演奏会では、この大劇場で大友直人指揮群馬交響楽団、高崎第九合唱団がベートーヴェンの「第九」を演奏する(公募招待公演)。こけら落としといえば、やはり「第九」だ。以後、マルタ・アルゲリッチと酒井茜のピアノ・デュオ、トリエステ・ヴェルディ歌劇場の《椿姫》、ケント・ナガノ指揮ハンブルク・フィル&辻井伸行など、多彩な公演が続く。広大な舞台と現代的な舞台機構によってオペラなど舞台芸術に対応する一方、音響反射板使用時にはコンサート専用ホールと同等のサウンドを実現するというフレキシビリティが強み。アーティストの息づかいが感じられる音楽ホールほか充実の施設 音楽ホールは415席の中ホール。こちらは群馬県初となる本格的音楽専用ホール。木のぬくもりが感じられる明るい色調のホールで、とても舞台が近く感じられる。試しに最後列に座ってみたが、客席の勾配がほどよいせいもあってか、十分に舞台が近い。リサイタルでは舞台と客席の距離感が、公演の成功に大きく影響するもの。この親密さはぜいたくというほかない。音楽ホールでは、仲道郁代ピアノ・リサイタル、パウル・バドゥラ=スコダ ピアノ・リサイタル、イザベル・ファウスト&アレクサンドル・メルニコフのデュオ他が開かれる。アーティストの息づかいを間近で感じることができるだろう。 スタジオシアターは大劇場や音楽ホールとはがらりと雰囲気を変えて、黒を基調としたモダンなスペース。こちらはロック・コンサートなどのスタンディングイベントや、演劇などを想定した作りになっている。スタンディングなら最大で1,000人の収容が可。取材時はフラットな平土間の状態になっていたが、可動席を用いて演劇、能、舞踊などにも活用される。 また、高崎芸術劇場は「創造スペース」と名付けたリハーサルホールやレッスンルーム、スタジオを持つ。リハーサルホールは大劇場の舞台と同規模の広さを有し、今後はここが群馬交響楽団のリハーサル室としても使われる。こちらもとても明るくきれいなスペースで、オーケストラのリハーサルには申し分のない環境だろう。群響にとっては心強い存在になりそうだ。 高崎芸術劇場は隅々まで心配りの感じられる美しい空間だった。あとは名演、名舞台の誕生を待つばかり。高崎市の新たなシンボルになってくれるにちがいない。スタンディングのロック・コンサートも可能なスタジオシアターリサイタルに最適な音楽ホールリハーサルホールは群馬交響楽団のリハーサル室としても使われる(写真提供:高崎芸術劇場)

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