eぶらあぼ 2019.9月号
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164CDCDメンデルスゾーン:「イタリア」、ベートーヴェン:交響曲第7番/西脇義訓&デア・リング東京オーケストラマルサリス:ヴァイオリン協奏曲 他/ニコラ・ベネデッティ美しい人は愛の庭に/鈴木美紀子&つのだたかし渡邉規久雄〈シベリウス・リサイタル Vol.5〉メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」ベートーヴェン:交響曲第7番西脇義訓(指揮)デア・リング東京オーケストラウィントン・マルサリス:ヴァイオリン協奏曲、「フィドル・ダンス」組曲ニコラ・ベネデッティ(ヴァイオリン)クリスチャン・マチェラル(指揮)フィラデルフィア管弦楽団ぼくのかわいいアネットちゃん(ブルターニュ民謡)/美しい人は愛の庭に(ピカルディ民謡)/アルカデルト編:ねぇマルゴ ぶどう畑を耕しなさい(ロレーヌ・アルザス民謡)/ディディエ・ル・ブラン:やさしく魅力的なうぐいす/デュ・ビュイッソン:ランベール氏の死によせる哀歌/ランベール:あなたに冷たくされて 他鈴木美紀子(ソプラノ)つのだたかし(リュート)シベリウス:4つの抒情的小品、2つのロンディーノ、抒情的瞑想、6つのバガテル、8つの小品、組曲「ベルシャザール王の饗宴」(作曲家自身の編曲によるピアノ版)、抒情的ワルツ渡邉規久雄(ピアノ)収録:2018年8月、三鷹市芸術文化センター(ライヴ)N&FNF65808 ¥オープンユニバーサルミュージックUCCD-1473 ¥2800+税ダウランド アンド カンパニイTS7247 ¥3000+税収録:2019年2月、東京文化会館(小)(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCT-00164 ¥3000+税名録音を多数残してきた西脇義訓が指揮する、デア・リング東京オーケストラ。彼の知見と方法論に基づき、“常識的な”オーケストラの楽器配置を完全にシャッフルしてしまう。類例のない活動の成果は、これまで録音でしか聴けなかったが、昨年ついに初の公演が実現した。通常配置での音響のシャープさは減ずるが、代わりに得られたのは、会場中に広がるハーモニー、柔らかく温かな音色、埋もれやすい内声と金管が無理なく共存する音響、楽員個々人の自発性と歌心など。想像以上の成果の大きさに感嘆するばかり。心地よく“常識”を覆していく西脇の挑戦。大いに注目し、傾聴したい。(林 昌英)ウィントン・マルサリスが作曲した初のクラシック作品たる本CDでは、さすがの「知将」だけに極めてハイレベルな音楽が展開される。とは言ってもクラシックに色目を使った作品という訳では全くなく、ジャズマンたる彼の出自がコープランドやバーンスタインにも連なるやり方でより多様な音彩のもとに繰り広げられ、さすがマルサリスと唸る他ない。こんなことはこの人以外には出来まい。2曲とも各楽章・曲には具体的な標題性があって分かりやすく、しかしそれがありきたりかつ平凡なやり方では全く処理されていない。ベネデッティの演奏も秀逸、クラシックファンにもジャズファンにも聴いていただきたい。(藤原 聡)400年前の失恋の痛みも、恋の駆け引きの危うさも、リアルな質感を伴い、我々の心を捉える。国内外の檜舞台、特に古楽シーンで、透明感あふれる美声を披露している鈴木美紀子。第2弾アルバムは、仏王アンリ4世やルイ13&14世の治世下で生まれた宮廷歌曲「エール・ド・クール」と古民謡を取り上げた。言葉や旋律の美しさ、感情の起伏を余さず掬い取る鈴木の表現は、コケティッシュで魅力的。さらに、名手つのだは、多くの個性的な女声歌手と共演を重ねるが、相手により、音色と表現法をがらりと変える。今回も、前奏の段階で、既に鈴木の声や歌いまわしを“予感”させてしまう巧みさだ。(寺西 肇)シベリウス・ピアノ作品のスペシャリスト渡邉規久雄による「シベリウス・リサイタル」第5弾。今年2月の東京文化会館のライヴ録音である。2003年の第1弾から続く渡邉の取り組みにより、作曲家がピアノ小品という形で伝えた特有の親密さや抒情性が、鮮やかに浮き彫りにされてきた。本作は第一次大戦前後の作品が中心。「4つの抒情的小品」や「6つのバガテル」など、詩の行間を慈しむようなタッチや、舞曲のみずみずしい躍動感に満ちている。管弦楽的で異国情緒に富んだ劇音楽のピアノ版組曲「ベルシャザール王の饗宴」も含む多彩な一枚。        (飯田有抄)SACDCD

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