eぶらあぼ 2019.9月号
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162CDCDCDJ.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲/延原武春&テレマン室内オーケストラ時間から空間へ ―ワーグナーへのオマージュ―/加藤洋之ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集(全曲)/中村太地&江口玲ファゴット・トリオ・ザルツブルクJ.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番~第6番延原武春(指揮) テレマン室内オーケストラワーグナー:黒鳥館への到着/ベルク:ソナタ/ワーグナー(リスト編):楽劇《パルジファル》より「聖杯への荘厳な行進曲」、楽劇《トリスタンとイゾルデ》より「愛の死」/シェーンベルク:6つの小さなピアノ曲/ウェーベルン:ピアノのための変奏曲/リスト:ソナタ、リヒャルト・ワーグナーの墓に 他加藤洋之(ピアノ)ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」・第2番・第3番中村太地(ヴァイオリン)江口玲(ピアノ)モーツァルト(A.ホーキンス編):ディヴェルティメント K.Anh. 229(439b)/ロッシーニ(F.ゲバウアー編):歌劇《セビリアの理髪師》より6つのアリア/モーツァルト:ファゴットとチェロのためのソナタ K.292/ピアソラ(F.ジャクソン編):タンゴ組曲 他ファゴット・トリオ・ザルツブルク【フィリップ・トゥッツァー、リッカルド・テルツォ、黒木綾子(以上ファゴット)】 他収録:2018年11月、東京文化会館(小)(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7901~2(2枚組) ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCT-00165(2枚組) ¥3800+税ビクターエンタテインメントVICC-60956 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9199 ¥2800+税指揮者の延原武春率いる日本を代表する室内管弦楽団・テレマン室内オーケストラが、創立55周年記念に東京で行ったライヴがリリースされた。「ブランデンブルク協奏曲」のどの曲においても、独奏、合奏、表現がいずれも練れて深みがあり、実に楽しい。第5番では、機動性に優れた高田泰治のチェンバロが華麗な音色で、浅井咲乃のヴァイオリンや森本英希のフルートと爽やかに絡む。長大なカデンツァも聴きものだ。第3番の特に終楽章は凄まじいスピードで疾走。まさに狂喜乱舞。第1番と第6番の緩徐楽章は、旋律と対位の声部の掛け合いが細やかに表情づけられてとても美しい。(横原千史)東京藝術大学大学院を経てリスト音楽院で学び、ジュネーヴ国際音楽コンクールで第3位入賞を果たしてドイツでも研鑽を積んだ加藤洋之は、国内外の一流演奏家から信頼を寄せられる室内楽奏者としても活躍中だ。そんな彼のソロ・アルバムは、濃密な音楽的変遷が見えてくるワーグナーやリストをはじめ、シェーンベルクら新ウィーン楽派の作品を集めた2枚組の豪華盤。リストやベルクのソナタにおけるドラマ性と明晰な構築力をはじめ、小品におけるデリケートで色彩豊かな音色など、精緻なピアニズムが凝縮し、加藤の表現力の多彩さ、深さが鮮烈に伝わってくる。(長井進之介)俊英ヴァイオリニストがデビューアルバムに「ブラームスのソナタ全曲」を選ぶ。賭けではなく必然として、この高峰に挑んだのが中村太地である。ウィーンで本場の語法を学んだ彼は、ブラームス国際コンクールで優勝した後にも、その勢いに任せず、他の流派の巨匠にも師事するなど、着実に表現の幅を広げてきた。機が熟しての録音は、芯のある美音と瑞々しい感性で紡ぎながら、力まず作品に語らせる懐の深さも見せる。経験豊富な名手、江口玲のピアノと共に、ブラームスの魅力を満喫させてくれる1枚で、特に第2番における自然体での心温まる演奏は得難い。未来の名匠の予感。(林 昌英)ザルツブルク・モーツァルテウム管の3人の奏者(テルツォは現在ゲヴァントハウス管首席、黒木は元・東京フィル首席)によるファゴット・アンサンブル・アルバム。すべて編曲ものだが、バセットホルンやバリトンの三重奏、チェロとの二重奏、作曲者と同時代の奏者が編曲した二重奏の《セビリアの理髪師》、ゲスト&打楽器を加えたピアソラと、意味ある選曲や工夫がなされている。演奏自体も、自在なテクニック、統一感のある音色とフレージング、柔軟で気品漂う表現が光り、珍しい編成の音楽を愉しく満喫させてくれる。新感覚を味わえる好ディスク。        (柴田克彦)SACD

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