eぶらあぼ 2019.8月号2
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58ハインツ・ホリガー《80歳記念》 オーケストラ・コンサート10/2(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ヒラサ・オフィス03-5727-8830http://www.hirasaoffice06.com/ハインツ・ホリガーと仲間たち(室内楽)10/4(金)19:00 盛岡市民文化ホール(小)問 ヒラサ・オフィス03-5727-8830 http://www.hirasaoffice06.com/10/5(土)16:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/10/6(日)15:00 福岡シンフォニーホール問 アクロス福岡チケットセンター092-725-9112 https://www.acros.or.jp/※10/6公演は「アクロス クラシックふぇすた」の一環で行われる1時間の特別プログラム。 世界的なオーボエ奏者であり、指揮者・作曲家としても現代音楽界を牽引してきた、ハインツ・ホリガーの生誕80年を記念した演奏会が、今秋相次いで開催される。 1959年にジュネーヴ、61年にミュンヘンの両国際コンクールで優勝以後、オーボエ奏者として活動を続け、ヘンツェ、リゲティ、シュトックハウゼン、ベリオら、現代を代表する作曲家たちが、ホリガーのために新作を書いてきた。「彼らは私を常に驚かせ、新たなインスピレーションを与えてくれる存在でした」と語るように、奏者としてオーボエという楽器の可能性を拡げる一方で、作曲家としても150曲以上の作品がショット社から出版されるなど、演奏と作曲の両方を長年追求してきた。自作と20世紀の偉大な作品を“吹き振り”で オーケストラ・コンサート(10/2)は、ホリガーが指揮をして、彼の作曲の師で、バルトークの高弟シャーンドル・ヴェレシュの「トレノス」やバルトークの「ヴァイオリン協奏曲第1番」、さらに自作を取り上げ、細川俊夫の新作やマルティヌーの「オーボエ協奏曲」ではオーボエも演奏する。共演は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、郷古廉(ヴァイオリン)、マリー=リーゼ・シュプバッハ(イングリッシュ・ホルン)。 「私の『2つのリスト作品のトランスクリプション』(1986)は、ヴェレシュの80歳のお祝いに作曲しました。これは、リストの2つの謎を私の音楽言語に置き換えた作品で、私の潜在意識から作品を引き出し、“夢”とも呼べるフィルターを通して、“存在”と“不在”の現実の多様な段階を表現しています。細川さんとは、彼がクラウス・フーバーのもとで学んでいた頃からの知り合いです。今回の新作、オーボエとイングリッシュ・ホルンのための『結び』は、オーボエに対する深い洞察と強い探求心から作られ、私もマリー=リーゼも、この作品を演奏することをとても楽しみにしています」 マルティヌーの作品では「指揮者を介して音楽家とコンタクトを取るより、ソリストと指揮者を兼ねる方が、コミュニケーションが直接的だと感じます」と、弾き振りならぬ、吹き振りにも注目だ。ゼレンカとバッハが現代の作品と出会う 一方、室内楽コンサート(10/4、10/5、10/6)ではバッハの作品とともに、同時代のボヘミアの作曲家ゼレンカの作品を取り上げる。忘れ去られていたゼレンカを再発見したのもホリガーの功績で、歴史的名盤とされる録音も残している。 「とてもシンプルで魅力的な作品で、バロック時代のオーボエの重要なレパートリーです。彼の作曲法は、数霊術に強く影響を受けていて、例えば、二重フーガが73小節で書かれているのは、ゼレンカの名前のアルファベットの順番を足し算すると73になるからです。ゼレンカの作品は、生前楽譜が出版されることなく、彼自身も孤独の中で人生を終えました。しかし、最新の研究で、彼の作品がバッハと同様に重要であると位置づけられたのは、ここ30~40年のバロック音楽研究における大きな発見と成果と言ってよいでしょう」 こちらは、シュプバッハ、ディエゴ・ケンナ (ファゴット)やエディクソン・ルイース(コントラバス)、桒形亜樹子(チェンバロ)らとのアンサンブル。 ホリガーは、近年、来日の機会が増え、毎回滞在を楽しみにしていると語る。 「新しい作品を柔軟に受け入れ、どの時代の作曲家に対しても敬意を払う、日本のみなさんの温かい気持ちに触れるたびに嬉しくなります。私は、能や雅楽といった日本の伝統芸能に興味をもっていて、今回も時間を見つけて日本の伝統芸能を味わいたいと考えています」ハインツ・ホリガー(オーボエ/指揮/作曲)現代で最も多彩な巨人の全貌を知る取材・文:柴辻純子Interview©Priska Ketterer

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