eぶらあぼ 2019.8月号2
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57上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団就任4年目の開幕は、より深みを帯びた王道の名作で文:林 昌英第609回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉9/5(木)19:00 サントリーホール特別演奏会 サファイア〈横浜みなとみらいシリーズ〉第10回9/8(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815https://www.njp.or.jp/ 上岡敏之が新日本フィル音楽監督に就任してから3年間、その共演は毎回のように充実の演奏とさまざまな話題を提供してきた。今秋からの4シーズン目は、シューベルトの全交響曲演奏を大きな柱として、その成果を広く知らしめていく。9月の開幕公演は上岡が登壇して、シューベルトの第4番とブルックナーの第7番、オーストリアの誇る大作曲家たちの名作交響曲を。 早熟にして早逝の天才、シューベルトがわずか19歳で書いた第4番は、シリアスな音楽で「悲劇的」のタイトルを持ち、尊敬するベートーヴェンの第5番と同じハ短調であり、多感な青年の情熱が伝わる力作だ。上岡と新日本フィルにとっても、今シーズンの方向性と覚悟を示す重要な1曲となる。 一方、ブルックナーは40代から交響曲を世に問い始め、ついに大成功を収めたのが59歳で完成した第7番。より深みを増した内容と伸びやかで美しい旋律を誇る、雄大な傑作である。さらに、この曲と上岡といえば、2007年、当時監督を務めていたヴッパータール交響楽団との日本公演で、通常60~70分ほどの本作をなんと90分もかけて演奏、大いに喝采と議論を呼んだ。むろん「演奏は日々変わっていくもの」と語る上岡のこと、過去のテンポは参考以上の意味はない。とはいえ、「ヨーロッパの楽団のような音色が身に付き始めてきた」という新日本フィルと、どんな精妙なハーモニーを聴かせ、感性を刺激するブルックナーを作り上げるのか? 12年を経て顕れる、新たな“上岡のブル7”。注目したい。上岡敏之 ©堀田力丸読売日本交響楽団 サマーフェスティバル2019「三大協奏曲」真夏に出会う新鋭たちの音楽にときめく文:山田治生8/21(水)18:30 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp/ 夏休み恒例、読売日本交響楽団のサマーフェスティバル「三大協奏曲」。ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、それぞれの協奏曲の傑作を楽しむだけでなく、それぞれの楽器の新しい才能に出会えるのが、このコンサートの魅力である。 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で独奏を務める髙木凜々子は横浜市出身。2019年、東京藝術大学を卒業。17年、ブダペストで開催された第1回バルトーク国際ヴァイオリン・コンクールで第2位、18年の第16回東京音楽コンクールでも第2位に入賞している。 ドヴォルザークのチェロ協奏曲を弾くアレクサンドル・ラムは、1988年、ウラジオストク生まれ。2015年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位に入賞した。昨年、ブリテンの無伴奏チェロ組曲全集を録音するなど意欲的な活動を続けている。 チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏するアレクサンダー・マロフェーエフは、01年モスクワ生まれ。ジュニア世代の国際コンクールで数多く優勝。すでに、ワレリー・ゲルギエフの指揮の下でも、チャイコフスキーの第1番を弾くなど、ロシア音楽界の期待の星となっている。 指揮のマルチェロ・レーニンガーはブラジル出身。すでに、ボストン響、シカゴ響、ベルリン・ドイツ響などのメジャー・オーケストラを指揮している。誰もが知る名曲を新しい世代のソリストたちはどう演奏するのだろうか。これからの音楽界を担う若者たちの演奏に注目したい。アレクサンドル・ラムアレクサンダー・マロフェーエフ ©Evgeny Evtyukhov髙木凜々子©Naoya Yamaguchi

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