eぶらあぼ 2019.8月号2
35/187

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロを披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。びわ湖ホールPreviewびわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/合唱で描く宮沢賢治の力強くも慈愛に満ちた優しい世界文:横原千史びわ湖ホール声楽アンサンブル定期公演 東京公演寺嶋陸也作曲:合唱劇《かなしみはちからに、~宮澤賢治 未来への手紙~》9/14(土)14:00 びわ湖ホール(小)9/16(月・祝)14:00 東京文化会館(小) 林と寺嶋の付き合いは長く、寺嶋は芸大時代から、「こんにゃく座」で編曲したりピアノを弾いたりしていた。寺嶋の最初のオペラ《ガリレイの生涯》(1995)を初演したのもこんにゃく座である。林光は今回のソングだけでなく、オペラ《セロ弾きのゴーシュ》など、賢治の原作を多く取り上げている。寺嶋が宮沢賢治を好んで題材とするのも、林からの薫陶のおかげかもしれない。 合唱劇《かなしみはちからに、》の脚本と演出はしままなぶ(草刈のクラリネットと斎木ユリのピアノ)。寺嶋としまは共作も少なくなく、宮沢賢治原作では合唱劇《賢治と嘉内―銀河鉄道の二人》(2012)とオペラ《グスコーブドリの伝記》(2016)がある。びわ湖ホール声楽アンサンブルと寺嶋は、林光《森は生きている》を林光の指揮で共演し、その2年半後作曲者急逝の代役で指揮し、今年のびわ湖ホールと兵庫県立芸術文化センターの再演でも大成功に導いている。びわ湖ホール声楽アンサンブルのプロ集団の洗練された歌唱に、寺嶋陸也としままなぶの強力タッグが仕掛ける今回の合唱劇《かなしみはちからに、》には、大いに期待が高まる。林光のソングともども、めくるめく宮沢賢治ワールドを体験できるのが今から楽しみである。 びわ湖ホール声楽アンサンブルの最近の活躍ぶりは目を見張るものがある。びわ湖ホール開館と共に創設され、昨年20周年を迎えた。オーディションで厳選されたプロのソリスト集団は、びわ湖ホールのオペラ公演などで毎回驚異的な水準の合唱を披露している。その能力が評価され、新国立劇場その他のオペラ公演や合唱作品でも招待されるようになってきた。今年の7〜8月には提携公演《トゥーランドット》で東京、びわ湖、札幌を巡演する。独自企画の演奏会の他、全国各地の演奏会、学校公演、アウトリーチと、人気の高まりと共に休む暇もない。この声楽アンサンブルは若手声楽家の実践経験を積む場でもあり、卒業生は60名に及び、ソロ登録メンバーとなり、各地のオペラ公演や合唱演奏会の独唱者として頻繁に招かれている。この4月から7名の新入団員が加わり、そのフレッシュな演奏は「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」でも披露された。 びわ湖ホール声楽アンサンブルが独自企画で最も力をいれている定期公演(第69回)と東京公演(第11回)が、今年9月に開催される。指揮者に作曲家・ピアニストの寺嶋陸也を迎えて、合唱劇《かなしみはちからに、》を披露する。この曲は寺嶋が2015年に作曲初演したもので、「宮澤賢治 未来への手紙」という副題をもつ。宮沢賢治は今回の演奏会全体のテーマでもある。前半に林光の賢治の詩によるソングアルバム《岩手軽便鉄道の一月》を、寺嶋の指揮とピアノにクラリネットの草刈麻紀が加わって演奏する。林の宮沢賢治によるソングは実に味がある。びわ湖ホール声楽アンサンブル寺嶋陸也

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る