eぶらあぼ 2019.8月号2
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156CDCDCDR.シュトラウス歌曲集/小森輝彦ディプティク~フランス・オルガン音楽、再興の時~/小川有紀パッサカリア ザ・ベスト・オブ・チェンバロ/中野振一郎ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール優勝10周年記念アルバム/辻井伸行R.シュトラウス:献呈、忍耐、万霊節、帰郷、セレナード、ぼくの考えのすべて、あすの朝、黄昏のかなたの夢、ぼくは愛を抱く、愛の讃歌、ばらのリボン、君を愛す、解き放たれて、子守歌、さまよう心、みつけたものは、あなたの蒼い瞳で、星、ひどいお天気 他小森輝彦(バリトン)井出德彦(ピアノ)フランク:幻想曲 ハ長調、「前奏曲、フーガと変奏曲」、祈り、コラール第1番/ボエリ:小品 ロ短調、同 ハ短調/ブノワ:歌え、舌よの旋律によるフーガ/ルフェビュール=ヴェリ:マルシュ/フェシー:フォンのストップで/ショヴェ:小品 ホ長調小川有紀(オルガン)ヘンデル:シャコンヌ ト長調(調子の良い鍛冶屋)、パッサカリア~組曲ト短調より/ラモー:未開人、やさしい訴え/A.スカルラッティ:フォリア ニ短調/D.スカルラッティ:ソナタ イ長調 K.208/J.S.バッハ:アリア~ゴルトベルク変奏曲より/ベンダ:チェンバロ協奏曲 ト長調より 他中野振一郎(チェンバロ) 川田知子(ヴァイオリン) 高田泰治(フォルテピアノ) コレギウム・ムジクム・テレマンムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」より/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」より/リスト:ハンガリー狂詩曲第2番/チャイコフスキー:ピアノ協奏曲より/グリーグ:ピアノ協奏曲より 他辻井伸行(ピアノ) 佐渡裕(指揮) BBCフィルハーモニック ウラディーミル・アシュケナージ(指揮) ベルリン・ドイツ交響楽団 他日本アコースティックレコーズNARD-5065/6(2枚組) ¥4000+税ナミ・レコードWWCC-7899 ¥2500+税マイスター・ミュージックMM-4060 ¥3000+税収録:2017年5月、ベルリン(ライヴ) 他エイベックス・クラシックスAVCL-25989~90(2枚組) ¥2000+税アルテンブルク・ゲラ市立歌劇場を中心に欧州で活躍し、邦人初のドイツ宮廷歌手の称号を得て帰国。日本のオペラ界を担うバリトンが、R.シュトラウス歌曲の網羅的録音リリースの夢を叶えた2枚組。多くが後に妻となるパウリーネの歌唱を前提に作曲され、ソプラノ歌唱が一般的なこのドイツ歌曲最後の輝きに、思いがけない魅惑の視点が加わった。名高い〈献呈〉や〈あすの朝〉は甘美で官能的な旋律の世界はそのままに、よりプライベートな心の内面を露わにした“愛の詩”に高められている。円熟期を飾る〈ひどいお天気〉の叙景的な歌もよりリアルに心に迫ってくる。 (東端哲也)小川有紀はフランス19世紀中期のオルガン音楽の研究者でもあるが、ここでは対象に演奏家として肉薄している。当時、革命によって破壊されたオルガンが再建される一方、近代化の中で教会の社会的意味も変化していた。世俗に向けて扉を開く者、屈折した思いを揺れ動く調やクロマティックに託した者…時代に応答したオルガニストたちの試みは、フランクという巨人へと流れ込み、20世紀以降の繁栄を導いていく。小川が時代と作曲家の精神に深く沈潜し掴んだダイナミズムを、那須野が原ハーモニーホールのオルガンの豊穣なサウンドが鮮明に伝える。知られざる歴史が浮かび上がるエキサイティングな一枚だ。(江藤光紀)2011年に発表されたチェンバリスト、中野振一郎のベスト盤を高音質リマスター化。独仏を軸にスカルラッティ父子とソロ作品、ヴァイオリンの川田知子やフォルテピアノの高田泰治とのデュオ、コレギウム・ムジクム・テレマンとの協奏曲と、中野の幅広いレパートリーを俯瞰。リマスターにより、高音がまろみを帯び、中音域の響きがより豊潤となり、フレンチのブランシェをはじめ、ジャーマンのミートケ、フレミッシュのルッカースとモデルとした楽器による音色の違いも明確に。録音から時間を経てなお、自然な緊張感と、創意に富んだ意外性を併せ持つ、快演の鮮烈さが伝わってくる。(笹田和人)世界的なピアニストとして活動を展開する辻井伸行。キャリア躍進の大きなきっかけとなったのが2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールでの優勝だ。本盤はこれまでの10年間の彼の軌跡。2枚それぞれに独奏曲と協奏曲が収められ、辻井の技術、表現力の進化の過程を追うことができる。彼の魅力は柔らかな響きの美音だが、年を追うごとに、その音色に力強さが加わっていくことが非常にわかりやすく聞こえてくる。特に協奏曲ではそれが顕著だ。チャイコフスキー(10年録音)よりも音の数は少ないはずのグリーグ(18年録音)の演奏の方が、音の厚み、迫力が増している。(長井進之介)CD

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