eぶらあぼ 2019.8月号2
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154CDCDCDブルックナー:交響曲第6番/上岡敏之&新日本フィルブクステフーデ:オルガン作品集/松居直美ヴァインベルク:交響曲第2番・第21番「カディッシュ」/グラジニーテ=ティーラ&バーミンガム市響 他1690年製のストラディヴァリウス「タスカン」/ファビオ・ビオンディブルックナー:交響曲第6番(ヨーゼフ・ヴェナンティウス・フォン・ヴェス編纂による1927年版)上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団ブクステフーデ:プレルーディウム ト短調、パッサカリア ニ短調、平安と歓喜もてわれはいま、テ・デウム、第一旋法のマニフィカト、暁の星のいと美しきかな、甘き喜びに包まれ、トッカータ ヘ長調、いまぞ喜べ 汝らキリストの徒よ 他松居直美(オルガン)エルゼ・トルプ(ソプラノ)ヴァインベルク:交響曲第2番・第21番「カディッシュ」ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(指揮)ギドン・クレーメル(ヴァイオリン) オリヴァー・ジェーンズ(クラリネット) ゲオルギス・オソーキンス(ピアノ)バーミンガム市交響楽団 クレメラータ・バルティカ 他ヴェラチーニ:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 op.2-12「アッカデミカ」よりチャッコーナ/コレッリ:同 イ長調 op.5-9/タルティーニ:同 ト短調 op.1-10「捨てられたディドーネ」/ヴィヴァルディ:同 変ロ長調RV34 他ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン) アントニオ・ファンティヌオーリ(チェロ) ジャンジャコモ・ピナルディ(テオルボ) パオラ・ポンセ(チェンバロ)収録:2018年4月、サントリーホール&横浜みなとみらいホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00696 ¥3200+税カメラータ・トウキョウCMCD-15151~2(2枚組) ¥3000+税ユニバーサル ミュージックUCCG-1852/3(2枚組) ¥3500+税Glossa/東京エムプラスPGCD923412 ¥2857+税上岡&新日本フィルのブルックナー第2弾。ハース版以前の1927年に出されたヴェス版による珍しい演奏だ。だが版の問題(主として強弱や速度に相違があるという)以上に、表現自体が個性的。出だしのヴァイオリンの異様な弱音に驚かされた後は、異例なほどしなやかに進行し、ブルックナーの交響曲の中では前進的な曲でありながら、あてもなく逍遥しているような感覚におそわれる。5番で1つの形を極めた作曲者が、異なる方向性を企図したことを示す演奏ともいえようか。いずれにせよ、上岡ならではの看過できないブルックナー演奏であるのは間違いない。(柴田克彦)北ドイツ・オルガン楽派の中心人物で、バッハに多大な影響を与えた先達ブクステフーデ。世界各地の銘器で録音を重ねている松居直美は、その佳品の録音にあたり、16世紀に製作された、コペンハーゲン郊外のロスキレ大聖堂のオルガンを選んだ。この楽器は一時、拡大・近代化が施されたが、1980〜90年代にバロック以前の状態へ修復。奇を衒うことを一切せず、奥行きある音色を生かした真摯な演奏が、対位法に彩られた楽曲の立体感と魅力を露わに。また、ブックレットでは各曲のレジストレーションも明示、コラール曲には本来あるべき歌詞とその対訳が付され、楽曲の深い理解に寄与する。(寺西 肇)2016年に30歳でバーミンガム市響の音楽監督に就任した、リトアニア出身の女性指揮者のDG(長期専属契約を結んだとの由)デビュー盤。今年生誕100年を迎えたポーランド生まれのユダヤ人作曲家ヴァインベルクの初期と晩年の交響曲が組み合わされている。第2番は全3楽章のショスタコーヴィチ風弦楽合奏曲、第21番は「ワルシャワのゲットーで殺された人々の記憶に」捧げられた全6楽章の大作で、共に極めてシリアスな音楽。ここでは、緊張感が終始保たれた中で、明確に彫琢された劇的な演奏が展開されている。この指揮者の才腕を明示した注目盤! (柴田克彦)かのヨアヒムが音色の美しさに感嘆したというストラディヴァリウスの名器「タスカン」。かつてジョコンダ・デ・ヴィートやピーナ・カルミレッリらに託されたこの楽器を用いて今回ビオンディが録音したのは18世紀イタリアのヴァイオリン・ソナタ集。どの曲も、ビオンディの明快な解釈が各曲の性格を的確に表現していて、さすが第一人者と唸らざるを得ない。タルティーニのメランコリーと名技性の対比や晴朗極まりないヴィヴァルディ、そして典雅なコレッリ…。どの曲も極め付けの名演といいうる。そして練り絹のようなその音色は「タスカン」の恩恵と同時にビオンディその人の匠の技ゆえのもの。(藤原 聡)SACD

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