eぶらあぼ 2019.7月号
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703大Bプロジェクト中村太地 ヴァイオリン・リサイタル9/23(月・祝)14:00 北九州市立響ホール9/29(日)14:00 サントリーホール10/5(土)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617http://www.tvumd.com/CD『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集』ビクター・エンタテインメントVICC-60956 ¥3000+税7/3(水)発売©Ai Ueda中村太だいち地(ヴァイオリン)ウィーン在住の若きヴァイオリニストがブラームスでデビュー!取材・文:奥田佳道Interview 「ブラームスは大好きな作曲家の一人です。このCDを聴いてくださった方が、何かのストーリーや美しい風景を思い浮かべて下されば嬉しいです。僕はソナタ『雨の歌』を弾く時、ペルチャッハの陽の光や木々の緑、湖などの景色を思い浮かべます」 2017年秋、オーストリアの南、ケルンテン州ヴェルター湖畔のペルチャッハで開催された第24回ヨハネス・ブラームス国際コンクールで第1位に輝いた中村太地が、この7月にCD『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集』で、満を持してメジャー・デビューを果たす。今も人気リゾート地のペルチャッハは、ブラームスが愛した避暑地のひとつ。交響曲第2番、ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」誕生の街として知られる。 1990年北九州市出身。10代から知られた存在だった。「ブラームス」以外の国際コンクール受賞歴も豊富だが、中村はキャリアを急がなかった。 ウィーンに住み、名伯楽ミヒャエル・フリッシェンシュラガー教授(サモヒル、メニューイン門下)からバッハ、ウィーン古典派、ドイツ・ロマン派のあり方を徹底的に学んだ。 「音色を付けるといったことには自信があるつもりで、小倉高校卒業後にウィーンへ行きましたが、先生はアーティキュレーションに厳しかった。最初のうち、バッハの無伴奏曲の数小節だけでレッスンが終わることもありました。僕は『日本語』で弾いていたようなのです。その時点でレパートリーとしていたソナタやコンチェルトも多かったのですが、先生のもとで学び直し、ザルツブルク、ウィーンの演奏スタイルを知ることもできたのです。レッスンはそれこそ週に何日も。素晴らしい時間でした」  去年からはオーギュスタン・デュメイの指導も仰ぐ。 「ソフィア・フィルとの共演でヨーロッパデビューし、最近はフィンランドのクフモ室内楽音楽祭でもよく弾いています。演奏家として、これまでとは全く別の視点を持つことも大切なのではと思い、ベルギーのデュメイ先生のところに通っています」 今年4月には、川瀬賢太郎指揮九州交響楽団と福岡、北九州で共演。ショスタコーヴィチの協奏曲第1番で絶賛を博す。ハチャトゥリアンも十八番だが、デビューCDはブラームスのソナタ3曲! 9月、10月の北九州、東京、大阪でのリサイタルもバッハ、ベートーヴェンの「クロイツェル」、ブラームスの「雨の歌」。王道を行く選曲だ。しかも大ホールでの演奏が続く。 「CDと同じく、作曲家としての眼差しも素敵な江口玲さんとの共演です。ギル・シャハムのリサイタルの伴奏で楽友協会によく来られていた頃からのファンです。 CDも秋のリサイタルも、ウィーンで学んだ、思い入れのある曲ばかりです。好きなソナタばかり。音楽の色や香りも味わっていただければ」 本物誕生だ。9/28(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 ミューザ川崎シンフォニーホール  044-520-0200https://www.kawasaki-sym-hall.jp/小川典子ピアノ・リサイタル 「ミューザと歩んだ15年」15年の軌跡を思い出の楽曲と共に振り返る文:長井進之介©武藤 章 英国と日本を拠点に世界的に活躍するピアニスト小川典子。ミューザ川崎シンフォニーホールのホールアドバイザーとして、これまで多彩な企画・演奏で多くの聴衆を魅了してきた。オール・ピアノ・コンチェルトのコンサートをはじめ、ベートーヴェンやモーツァルト、そしてドビュッシーの作品を集めたコンサート、同ホールを丸一日ジャックして行う「Noriko’s Day」など、意欲的かつアイディアに富んだ数々の公演は、このホールを見事に盛り上げている。小川とミューザ川崎の関係も今年で15年目。「ミューザと歩んだ15年」と題して行う今回のコンサートは、これまで小川が同ホールで行ってきた公演で重要な役割を果たしてきたモーツァルト(K.331)やベートーヴェンの「熱情」ソナタをはじめ、彼女が初演を務めた菅野由弘の「水の粒子~ピアノと明珍火箸のための」、ジョセフ・フィブスの「NORIKOのためのセレナータ」なども演奏される。小川とミューザ川崎のタッグを愛する人々はもちろん、名曲や秘曲好きの方も存分に楽しめる内容となっている。

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