eぶらあぼ 2019.7月号
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64演奏家と邦人作曲家シリーズ2019 in KANSAI関西の“モダニズム”と“現代”に光を当てる文:江藤光紀7/13(土)15:00 大阪/いずみホール問 日本演奏連盟事務局03-3539-5131 http://www.jfm.or.jp/ 音楽家たちの互助組織として1965年に発足した日本演奏連盟(演連)は、現在約3200余名の会員を擁する国内最大規模の音楽団体として活動している。連盟創立50周年の2015年には一週間にわたり日本の近代音楽史を俯瞰する意欲的な企画を行ったが、今年は同連盟関西委員会の創立30周年にあたり、それを記念して「演奏家と邦人作曲家シリーズ2019 in KANSAI」が開催される。 プログラムは演連の豊かな会員層を反映して盛りだくさん。三部構成で、第1部は「ピアノは喜び」と題し戦前の国際派モダニスト大澤壽人から西村朗のデュオ曲を経て、酒井健治の委嘱新作へと至る。第2部「器楽の愉しみ」では西村の無伴奏ヴァイオリン曲で始まり、戦前にベルリン・フィルを指揮したことでも知られる貴志康一の弦楽四重奏曲、そして廣瀬量平のフルート・オーケストラ曲へと編成を拡大していく。第3部は一転して「歌は慈しみ」と題し、ソプラノ、テノール、バリトンの名旋律に耳を傾けた後、清水脩の混声合唱曲で閉じる。 豊嶋泰嗣、小栗まち絵、周防亮介(以上ヴァイオリン)、上村昇(チェロ)、晴雅彦(バリトン)、阿部裕之(ピアノ)ら、若手からベテランまで関西圏で活躍する音楽家を中心に、壮観な布陣で臨む。実は選ばれている作曲家も吹田出身の貴志、天王寺出身の清水、兵庫出身の大澤、酒井、京都市芸大の教授を長く務めた廣瀬と、関西にゆかりが深い。会場となるいずみホールのレジデント・オーケストラ、いずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督でもある西村も大阪出身だ。戦前から京阪神は関東首都圏とは異なるモダニズム文化を発展させてきたが、これらの楽曲にはその歩みが刻まれている。関西文化の水脈を寿ぎ、今後の発展を願う貴重なコンサートである。小栗まち絵テノールの世界 ~輝ける歌声~日本を牽引するテノール3人が集結、真夏に響く熱き歌声文:東端哲也7/30(火)19:00 サントリーホール問 メイ・コーポレーション03-3584-1951 https://saegusa-s.co.jp/ サントリーホールに、現在の日本オペラ・シーンを牽引する3人のテノールが集結し、それぞれ輝かしい歌声を披露する夢のステージ。独・伊・仏の人気オペラからの名アリアや歌曲を歌い分ける華麗なステージだ。誰がどの曲を歌うのかは当日発表とのことで楽しみは膨らむ。 顔ぶれの筆頭は2000年にウィーン国立歌劇場にデビュー以来、クラシック・ファン以外にも抜群の知名度を誇るジョン・健・ヌッツォ。近年はドミンゴやホルン奏者のバボラークらスターとの共演でも話題を集め、ドイツ歌曲の分野でも高評価を得ている彼の幅広いレパートリーに期待したい。続いては新国立劇場や東京二期会を中心として着実にキャリアを積み重ね、日本を代表するテノールとしてトップをひた走る樋口達哉。今年も《金閣寺》の柏木役で絶賛を博したばかりの彼が、イタリアの太陽に例えられる明るい歌唱で本公演の花形となるのは間違いない。そして藤原歌劇団公演をはじめ、活躍めざましい笛田博昭。類い稀なる声と恵まれた体格を生かし、各地で常に好評を博している彼も先輩たち2人を圧倒せんばかりの存在感で魅了してくれるはず。 歌のほかにも、東京フィルハーモニー交響楽団による演奏や、伴奏に“うた”を知り尽くした人気ピアニスト、河原忠之の起用など聴くべきところは多い。案内役でもある、作曲家の三枝成彰が編曲した〈早春賦〉〈待ちぼうけ〉〈からたちの花〉など日本歌曲も必聴だ。指揮を務めるのは特にイタリア・オペラに定評のある園田隆一郎。男たちによる盛夏の饗宴をお聴き逃しなく!樋口達哉 ©Segi Shinichi周防亮介上村 昇晴 雅彦阿部裕之豊嶋泰嗣 ©大窪道治笛田博昭ジョン・健・ヌッツォ

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