eぶらあぼ 2019.7月号
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61王子ホール + 観世宗家監修 「はごろも」~銀座の飛翔能と西洋音楽の新たなる融合文:室田尚子7/23(火)18:00 王子ホール問 東京アート&ライブシティ構想実行委員会事務局03-5909-3068https://www.artandlive.net/ 「羽衣伝説」は、民話や童話などで多くの日本人が幼い頃から親しんできた物語であるだけでなく、室町時代から現代まで上演され続けている能の人気演目でもある。三保の松原の松の木に美しい羽衣がかかっていて、それをみつけた漁師の前に天女が現れ、「それは自分の羽衣だから返してほしい」というが漁師は返そうとしない。羽衣がないと天界へ帰れない天女は嘆き悲しみ、その姿を見た漁師は羽衣を返すことにする。天女はお礼に美しい舞を舞い、彼方の富士山から天へと帰っていくという話。 この羽衣伝説をもとに作曲家・加藤昌則が新たに曲を書き下ろし、能とヴァイオリンとソプラノが共演する舞台「はごろも~銀座の飛翔」が、王子ホールで上演される。これは、日比谷・銀座・築地地区を一大芸術拠点として発展させようという「東京アート&ライブシティ構想」の一環として、共に銀座にある王子ホールと観世能楽堂が手を組んだ連携企画の第2弾。 観世流シテ方の武田宗典をはじめとする能楽師、ヴァイオリンはN響第1コンサートマスターの篠崎“まろ”史紀、ソプラノは東京二期会のプリマドンナ・森谷真理と、錚々たるメンバーが顔を揃えた。演出は、今日本でもっとも注目を浴びる演出家のひとり、田尾下哲が手がける。そのほか、王子ホールのロビーには書家の藤田雄大作品が展示されるなど、能、クラシック、書という複合的なアート空間を作り出す。ひと味もふた味も違った「銀座のアート」を楽しめる大人の一夜となりそうだ。篠崎“まろ”史紀ファゴット・トリオ・ザルツブルクロー・サウンドがあなたの耳と心を刺激する文:笹田和人7/4(木)19:00 名古屋/電文ザ・コンサートホール、7/6(土)14:00 宮崎/メディキット県民文化センターイベントホール、7/9(火)19:00 大阪/ザ・フェニックスホール、7/12(金)19:00 ヤマハホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jp/ 低音のダブルリード楽器で、オーケストラやアンサンブルの枠組みをがっちりと支えるファゴット。でも、単なる“縁の下の力持ち”かと思えば、これがなかなか機動力に富み、優雅で饒舌、そして何よりも魅力的なのだ。ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団で同僚だった、3人の名手で構成される「ファゴット・トリオ・ザルツブルク」。ファゴットのみによる珍しいアンサンブルが、4ヵ所を巡る日本ツアーを敢行、変幻自在な響きの世界をかたちづくる。 メンバーは、モーツァルテウム管首席のフィリップ・トゥッツアー、同管で活躍する黒木綾子に、やはりモーツァルテウム管首席を経て、昨夏からライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の首席を務めるリッカルド・テルツォ。今回のツアーは、モーツァルトやハイドンの「ディヴェルティメント」、ロッシーニのオペラ《セビリアの理髪師》のアリア集など古典作品から、近代アルゼンチンの巨匠ピアソラの「タンゴ組曲」まで、多彩な佳品を詰め込んだ新譜(コジマ録音 7/7発売)のリリース記念を兼ねる。 ステージでは、ファゴット仲間である都響の岡本正之(7/9)、新日本フィルの河村幹子(7/12)の両首席、愛知室内オーケストラの野村和代(7/4, 7/6)と、打楽器の西田尚史も共演。「タンゴ組曲」をはじめ、CDの収録曲も交えて。ハイドン「デュオ ニ長調」(原曲:2台チェロ)、モーツァルトのオペラからの名アリア(ダンツィ編)など二重奏から仏バロックの鬼才コレットによる異色の協奏曲「不死鳥」と、四重奏まで編成も自在に、佳品の数々を披露する。森谷真理 ©武藤 章田尾下 哲 ©平岩 亨加藤昌則武田宗典

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